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告白

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
(2010/04/08)
湊 かなえ

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非常に抑えた静かな筆致の中に、作者の怒りを確かに感じた。
感じ取ることができた私もまた、同じ怒りの中にいる。
そういう意味で、ずい分話題からは乗り遅れてしまったが、私にとってはタイムリーな作品。

世の中では、毎日様々な事件が起こっている。
ビックリするような大事件から、微笑ましいものまで、新聞の三面記事を斜めに読むだけでも相当の時間を要するほどである。
けれども、そのどれもが、大多数の人間にとっては、自分とは直接関わりのない事件だろう。
言わば、俯瞰しながら冷静に見られるはずの立場である。
にも関わらず、多くの人間が、"だれもが認める残忍な事件に限って"そこに無理矢理割り込み、あたかも当事者のごとく参加したがるのは何故だろう。

このところワイドショーを騒がせていたのは、クラスメートのいじめによる、ある中学生の自殺事件。
私も、子どもを持つ親として、この事件には大いに興味があるし、胸を痛めた。
加害者には相応の制裁を。
それは人として尤もな感情である。
けれど、その事件に関しては、私はあくまでも無関係のその他大勢の一人であり、加害少年を裁く立場にはない。
純粋に関係者と呼べる人数は、そう多くはないはずである。
にも関わらず、事件があった学校や関係者の勤め先には連日非難の電話が押し寄せているという。
ネットの論調も激しい。加害者の氏名や住所を公開し、「集団リンチに遭っても仕方がない」「制裁を!」と声高に叫ぶ。

「告白」の中にもそれと同じ構造がある。
クラスメートによる、加害少年へのいじめ。
最初の一人として声を上げる勇気など微塵もないくせに、だれかが口火を切れば「我も我も」と後に続く。
「こいつは罪人なんだから当然の報いだ」
というのが彼らの主張だ。

たとえ"いじめられる方に原因があろうと"いじめはいけないことだ

とエラそうに主張する自分たちが、同じことをしているという矛盾には全く気付かない。
制裁を与える権利があるのは当事者だけである。無関係の者が手を下せば、それはただの"いじめ"と何ら変わりない。新たな加害者と被害者が生まれるだけだ。私はそう思う。
圧倒的に「正義」の立場に立つと、だれもがそれを振りかざしたくなる。そして弱小意見を排斥し始める。恐ろしい集団心理だと私は常々思っている。

だれもが自分を正義の側におきたがる。
世界の内紛を外側から見ている時にはだれでも「どっちもどっち」なんてお気軽に論評するくせに、問題が、ことご近所や職場になると途端に「私は悪くない。あの人が悪い」と責任転嫁に忙しくなる。
正義も自分を出発点におくと、あっという間に胡散臭いものに転ずるのだ。

ひとつの事件が、立場を変えると様々な様相を呈する。
この物語でも、様々な関係者が一様に自己の正当性を主張する。
「自分はこんな生い立ちだから」「あの人がこうだったから」こうなったのだ、と。
実に胸糞悪い。
私は、何かが起こったとき、それをどう捉えるかは自分次第だと思っている。相手は関係ない。
その意味で、元担任の行為はある意味あっぱれではある。
だが、直接刺し違えるほうが、余程良い仇討ちであったろうと思う。

強い余韻は残るが、後味は良くなかった。

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往復書簡

往復書簡往復書簡
(2010/09/21)
湊 かなえ

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最後に自筆の手紙を書いたのはいつだろう。
それは一体だれに宛てたものだったろう。
ああ、そうだ。きっとあれだ。
履歴書を郵送した折に付けた送り状(笑)。
考えてみると、Eメール全盛の現在、時間も手間もかかる手紙をしたためることはまずない。
そうせざるを得ない状況にあるか、もしくは自分の印象をよくする目的か。
文通とか、私もよくやったもんだ。今から思えば楽しかったな。私が子どもの頃は雑誌に「ペンパル募集」とかいうコーナーがよくあって、個人の住所と名前がフツーに掲載されていたなぁ。それを誰かに悪用されるとか考えもしなかった、古き良き時代…。
レターセットも凝ったものが多く、匂い付きなんてものもあった。
いや特別匂い付きの便箋でなくても、書き手の匂いを感じることもあったなぁ。それはメールでは無理なことで、手紙ならではの良さだろうな。

というわけで「往復書簡」。
3つのストーリーが、それぞれ、手紙の交換で語られるわけだが、最初のお話は、ちと無理があったかなぁ。
消去法でいくと、途中で筋書きがわかっちゃったし、わかった上でも、「うーん…無理ダロ」という印象。
"作り話"の域を超えてなくて残念だった。
でも、自分が何気なく口にした言葉や深く考えずにとった行動が、思いもかけず他人に影響を与えていることってあるのだなぁ、とちょっと怖くなってしまった。そして外見だけでは、心の中まではわからないということ。
私も心しておこう。
2つ目は、ずっしりと心に重く響く、余韻のあるお話。
それぞれの生徒の心の傷、そして先生の気持ちを考えると、涙が止まらなかった。
でもみんな、それぞれに、事実を受け止め、消化して、自分なりに歩いていくしかないのだ。
最後の展開は、ちょっと私には読めなかったなぁ。嬉しい驚きであり、救いのある結末で良かった。
3つ目のストーリーは、初めはただの遠距離恋愛中の恋人どうしのラブレターの交換から始まる。
しかしラストに向かって、とある事件の真相が2転3転し、目が離せない展開に。
"知らない方が幸せ"とか"墓場まで持っていくべき事実"ってのはやっぱりあるよね。
読み手にどのようにも受け止めることのできるエンディングは良かった。
私は、でもやっぱり、あれは幸せな終わりなのだと信じたい。

真実はひとつでも、受け止め方によって、物事は様々な姿に形を変える。
そして、関わる人の数だけ、影響をばら撒く。
みんな、物事の一面しか見ることができない。傍観しているだけのつもりでも、俯瞰することは無理だから。
たとえば鉛筆は、正面から見れば長方形でも、実は六角形だったりする。そんなふうに、本当のことなんて、なかなか見極めるのは難しいし、それはそれでいいのかもしれない。
ただちょっと、時々は立ち止まって、理解できない他人の行動も「そんなこともあるかもしれないね」と認めることのできる自分でありたい。

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日々子育てに仕事に大忙し。
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そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

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