スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ソロモンの犬

ソロモンの犬 (文春文庫)ソロモンの犬 (文春文庫)
(2010/03)
道尾 秀介

商品詳細を見る

表紙のわんこにそそられます。

でも、子どもが死ぬ話はイヤだなぁ。
このお話の中では必然だったかもしれないけれど、死ななくても良かったんじゃないのかなぁ。もっと他の方法はなかったのかなぁ。
甘いのかもしれないけれど、悪いことをしていない者が救われないというのは、私は好きじゃないです。
それが動物や子どもだと、更に切ないです。
その部分が邪魔して、これを青春群像劇と呼ぶにはちょっと…と私は感じました。
面白かったんだけど、手放しで「あー面白かった」とは言えない。
そんな感じ。なんだかモヤモヤするのです。

けれど、主人公には好感が持てるし、他の登場人物もなかなか個性的で、作品自体は良い感じでした。
特に間宮教授が味わい深いです。

少年の死は本当に事故だったのか。
すべてを知っている犬のオーピーの話が聞けたら。
そこから、動物と会話が出来るようになるという「ソロモンの指輪」の逸話が出てくるわけですが、実はみんな元々「ソロモンの指輪」を持って生まれてきているのよね。
五感と更に第六感も寄せ集めて脳を働かせれば、犬の気持ちや行動の理由はきっと理解できる。
そしてそれは動物に対してだけではなく、人にも当てはめることができる。
要は観察力だと思います。
漫然と"見て"いるだけでは何もわからない。
うーん、何だかナショナルジオグラフィックチャンネルの「カリスマドッグトレーナー」シーザー・ミランを思い出しました。
彼も、常に犬の行動をよぉぉく観察します。耳の向き、尻尾の位置、目の動き、鼻の動き。何一つ見逃さない。
そして「この犬は今こう思っている」と判断し、犬に合った方法を採る。
いつも凄いなぁと思うんだけど、それって別に魔法でも何でもなく、観察の結果なのよね。

私は、いつもぼへーっと生きているので、なかなか観察力が研ぎ澄まされない。
シーザーや間宮教授を見習わねば。ねば。

閑話休題。

さすが道尾作品らしく、仕掛けは幾重にも施されています。
「えっ!?」とビックリした後、またまたどぱーんと「ええーっ!?」の波が来ます。
一粒で二度美味しい。

だけどなぁ。
やっぱり一番弱い者が一番悲しい目に遭うお話というのは、ちょっとなぁ、という思いが最後まで付き纏い、付き纏い…なんだか胸の痛みがいつまでも消えないお話でした。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村
↑「カリスマドッグトレーナー犬の気持ちわかります」の大ファンです私。
スポンサーサイト

テーマ 書評
ジャンル | 小説・文学

龍神の雨

龍神の雨 (新潮文庫)龍神の雨 (新潮文庫)
(2012/01/28)
道尾 秀介

商品詳細を見る

思い込み、思い違い、すれ違い。

人という生き物は、その名の通り、"人の間"にあってこそ存在できるものであろう。
人は一人では決して生きていけない。
しかし、一方で、個々はそれぞれ独立した思考を持つ存在だから、悲しいことにその中では様々な軋轢や諍いも生じてしまう。

「これぐらい言わなくてもわかるだろう。」

「気持ちを汲み取ってほしい。」

往々にして、人は相手にそう期待する。しかし、思いのほか気持ちは真っ直ぐには伝わらないものだ。

私の大好きな森博嗣さんの小説の中にこういう一節がある。

「相手の思考を楽観的に期待している状況……、これを、甘えている、 というんだ。いいかい、気持ちなんて伝わらない。伝えたいものは、言葉で言いなさい。 それが、どんなに難しくても、それ以外に方法はない」(森博嗣『詩的私的ジャック』)

その通りだと私も思う。そして常々自戒している。


この物語は、そういった、"思い違い"、"外面と内面の相違"が産んだ悲劇の物語である。
すべての登場人物が、あとほんの少しずつ思いを率直に口に出していたら、きっとこんな悲劇は生まれなかったろう。
もちろん、それはそれで、また別の騒動も引き起こされたかもしれないけれど、それでも、こんな残酷な事態には至らなかったはず。

常々思うことだが、本当に、人は見かけによらない。
そして、決して自分の目に映っているものがすべてではない。むしろ、ほとんど何も見えていやしないのだ。

そこに気付かず、目に見えているものがすべてで真実、と思い込むところから悲劇は始まった。
人生、生きてさえいれば、大抵のことはやり直しがきく、とよく言われる。
けれど、やはりどうやっても取り返しのつかない物事はある。

この物語の主人公である兄と妹の、これからを思うと胸が痛む。
どんなに悔やもうと誰を呪おうと、自分の行動の落とし前は、自分でつけるしかないのだ。


彼らが見たものは、本当に"龍神"だったのだろうか。
見たいものしか見ようとしない、そんな者の目に映る"それ"が、紛い物ではないとは誰にも言えない。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村
↑道尾マニアになりそうです

テーマ 書評
ジャンル | 小説・文学

カラスの親指

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)
(2011/07/15)
道尾 秀介

商品詳細を見る

ミステリーの中でも、私はとりわけ叙述トリックが大好物なわけなのだが、同じ「やられたー!」であっても、騙されて気持ちの良い作品と後味の悪い作品とがあると思う。

で、これは前者(お話自体はミステリーではないけれど)。
初読み道尾作品が「向日葵の咲かない夏」という、なんとも陰惨な作品だっただけに、それと対照的な明るさのあるこのお話の、突き抜けたスカッと感はなんとも小気味良い。
同じ趣向の、とある辻村深月作品(ネタバレになりそうなので敢えて作品名は伏せる)では、"気持ちを踏みにじられた"不快感があったのだが、本作では、騙されても「そうだったんだね。」という安堵が残るだけで、別に腹も立たなかった。

それは、やはり作中のキャラに因るところが非常に大きい。
どの登場人物もそれぞれに魅力的な愛されキャラなのだ。
みんな幸せになってほしいな、と素直に思える人物ばかりだと言うのも、なかなかに稀有な作品である。

特にテツさんが良い。
彼の語る「指」の話がとても秀逸で印象深いのである。
ただ、ここでそれを語ってしまうと、せっかくの本作の良さを削いでしまう可能性があるので、どんな話か興味のある方は、是非とも読んで確かめてみてほしい。

それにしても、「職業に貴賎なし」とは言うけれど、やはり他人に迷惑をかけたり苦痛を強いるような金儲けの方法は間違っていると私は思うし、そういうものを「仕事」とは言いたくない。
甘い考えかもしれないが、真っ当に生きたいと、誰もが思っていると信じたい。

終盤、なんだか道尾さんにしてはあま~い展開だなぁと拍子抜けしているところに

やってきました。

大ドンデン返し!

これは大技というか、荒技。
リアリティがあるかと言えば、ない。
ないないない、あるわけないよこんなお話。

でも救われる。じーんとする。

絶対にないが、この広い世間で、こんなことが実際あってもいいな、と素直に思える。
冒頭に記述した通り、後味が良く、しかも何とも言い難い余韻が後を引く。

うーん。
道尾秀介、ちょっとクセになりそう。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村
↑道尾マニアになりそうです

テーマ 書評
ジャンル | 小説・文学

向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)
(2008/07/29)
道尾 秀介

商品詳細を見る

だ、騙された……。
向日葵というタイトルに騙された。
向日葵には、真夏に凛と上を向いて咲く、元気な花というイメージがあるのだもの。
よもやこんなダークでホラーなお話だとは。
そう思って改めて見返せば「咲かない」なのだよね。そうか、咲かないのか(しょんぼり)。
しかしよくよく考えれば、向日葵って結構怖いかも。特にあのデカイほう。
あれも何かの生まれ変わりなのかもね。たとえば、日の目を見たかと思えばすぐに死んじゃった生き物とか。

向日葵は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ(前田夕暮)

どっしりじゃなくゆら~りだもんね、結構ホラーだよ。
という主旨の感想を、この短歌について書いたら、「それは間違っている」と国語教師にさくっと斬って棄てられたなぁ。ああ、遠き高校生時代。

それはともかく。
冒頭からして、相当怖いのだこれ。
夏休み前の終業式の日。学校を休んだS君の家に、担任に頼まれ、学校から配布されたプリントを持って行ったミチオ。しかしそこでミチオはS君の首吊り死体を見つけてしまう。S君の遺体は、庭に咲く向日葵を凝視しながらぎぃぎぃと揺れている…。
ところがそのことを知らせに学校に戻っているあいだに、何故かS君の遺体は忽然と消えてしまう。

人は死んだら7日ごとに転生の機会が訪れるという。ちょうど7日目、死んだはずのS君が、なんとクモとなってミチオの前に現れる。
そしてクモの姿のS君は、ミチオに「僕は自殺ではなく殺された」のだと告げる。

ひぃぃぃぃぃぃぃ。

私はホラーが全く以ってダメなのだ。
この時点でもう、この本を手に取ったことを悔やんだ。ムンクの叫び状態だった。
だけど続きが気になる。S君を殺したのは果たして誰なのか。そして自殺に見せかけたのならどうして遺体を隠したのか。
同時期に近隣で繰り返されていた犬猫の不審死とのつながりは?何故死んだ動物は一様に足を折られ口に石鹸を詰め込まれていたのか。

この物語では、自分を守るため、だれもが嘘をついている。
ひとつの嘘が暴かれても、また次の嘘が重ねられ、様々な糸が絡み合って、ミチオじゃないが、どんどん何がなんだかわからなくなってくる。
いったい真相はどこにあるのか。
通勤電車の中で読み始めたものの、気になって気になって仕事が手につかないほど。その夜一晩で一気に読んでしまった。

やがて明かされる真相。すべての事柄がひとつに繋がる。
ああそうだったのか。
3歳の妹に感じた違和感の正体も、壊れた母親の真実も、あれもこれも。
これは本当に見事な叙述トリックだった。
あれ?…ということは、もしかしてスミダさんも?
いやいやミチオ自体、既に狂気の中に立っているのだろう。

「誰だって、自分の物語の中にいるじゃないか」

ミチオの言葉にいきなり頭をがつんと殴られた気がした。
そう、だれだってみんな自分に都合の良いストーリーを組み立て、ある意味自分だけのファンタジーの世界を生きている。
嘘をつかない人間などいないのだ。
できるだけ傷つかないように、壊れてしまわないように、自分を守って生きている。

怖いけれど、切ない。
胸がきゅっと苦しくなるそんなお話。後味は決してよくないけれど、心の中にずしっと残る重さがあった。

ただ一点。これは私自身が今現在「母親」という身であるからこその違和感。
ミチオの母親が壊れてしまったのは、理解できる。
しかし、怒りの矛先がむかうのは、決してそこじゃないはず。

母親なら、ああはならない。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村
↑よろしくお願いします

テーマ 書評
ジャンル | 小説・文学

アメーバなう
オススメ
プロフィール

道楽猫

Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
でも家事は忘れても(・_・)読書は忘れない。
そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
メールフォーム
メールはこちら>>

*上(別窓)のメールフォームが表示・動作しない場合はこちら

検索フォーム
今読んでる本
dorakunekoの今読んでる本
リンク
つぶやき
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

BK1
書評の鉄人
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。