スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

猫語の教科書

猫語の教科書 (ちくま文庫)猫語の教科書 (ちくま文庫)
(1998/12)
ポール ギャリコ、スザンヌ サース 他

商品詳細を見る

面白いと思える本には2種類あるように思う。
ページをめくるのももどかしく、その世界に引き込まれ、あっと言う間に読了してしまう本と、美味しいおやつを楽しむように、ちびちびとすこーしずつ時間をかけてゆっくりと読み進める本。

私にとってこの本は後者。
読んでいる最中、ずっとくすくすにやにやが止まらなかった。
いや、えへらえへらだったかも(笑)。

だって

人間の"躾け方"が書いてある本なんですよ?
猫が人間の家を乗っ取る方法が書いてあるんですよ!

最初の方の、人間の男を躾ける方法なんてもう、抱腹絶倒!
まーさーに!
うちにいた猫と夫の関係なのだもの。

夫はずっと悦に入っていた。
「あの子は自分が呼ぶと、何を置いてもとんで来る。そして撫でてやるとゴロゴロとのどを鳴らして喜んでくれる。うちで一番あの子に懐かれているのは自分なのだ」
と。

だけど私は知っていた。
夜、寝る前にそうやってゴロゴロ甘えていた猫が、夫が寝入ると、さっさと寝床を抜け出して
「しょうがないわねぇ」
てな顔をしてすたすた歩いてゆくことを。
私は、これを「猫による夫の寝かし付け」とこっそり呼んでいた。

本当に、ギャリコはかつて猫だったことがあるに違いない。
なんたって、猫にとっての秘密兵器である「声を出さないニャーオ」を知っているし、
猫が書いた文字を解読できたのが、その何よりの証拠(…笑)

随所に散りばめられたモノクロの写真をながめるのもまた楽しい。
著者さんはとても美形な猫様なのだ。

うっとりと、ゆめごこちで本を閉じ、また開き。
一冊で、二度も三度も楽しめる、お得感満載の逸品。
(なんの営業トークだよ)

ああ、私もまた猫に家を乗っ取られたい。
そして夫を躾け直してもらいたい。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村
↑猫好きは「猫ちゃん」じゃなく「猫さん」って言うよね。
スポンサーサイト

テーマ 書評
ジャンル | 小説・文学

トマシーナ

トマシーナ (創元推理文庫)トマシーナ (創元推理文庫)
(2004/05/25)
ポール・ギャリコ

商品詳細を見る

ずいぶん前に書かれた本だけれども、100年、いや1000年読み継いでもらいたい名作。

かの「ジェニィ」を大叔母に持つ由緒正しきトマシーナは、気高くも慎み深く礼儀正しく、猫の良いところをギュッと濃縮したかのような愛すべき雌猫。
「ですます」調で丁寧に話し、飼い主宅への宿賃として献上するネズミを捕獲する手段を、何日もかけて用意周到に実行する辛抱強さとアタマの良さも兼ね備えている。そして世話になっている家の娘メアリ・ルーに、自分の計画を邪魔されあちこち引っ張り回されたりしても文句も言わずに大人しく従っている。トマシーナはメアリ・ルーのお守り役も果たしているのだ。

けれども、一家の主であるマクデューイは、そんなトマシーナには目もくれず、トマシーナの素晴らしさに気付きもしない。
むしろ、彼が唯一溺愛している娘のメアリ・ルーが、自分よりもトマシーナにべったりであることを快く思っていないフシがあり、トマシーナを邪険に扱ったりする。
そんなマクデューイの職業はなんと獣医。
本当は人間のお医者さんになりたかったのだが、獣医だった父親の跡を無理矢理継がされた形であるため、獣医の仕事には全く熱意を持っていない。むしろ最愛の妻を動物からの病気感染で亡くしてからは、彼の動物嫌いには益々拍車がかかり、少しでも治る見込みがないと診断した動物は、飼い主の気持ちも考えずさっさと安楽死させてしまう始末。

そして運命の日。
憐れトマシーナは、多忙なマクデューイのおざなりな診断で「髄膜炎でもう治る見込みがない」とあっさり安楽死させられてしまうのだ。
その日からすべての歯車が狂ってしまった。
トマシーナはただの猫ではない。幼くして母親を亡くしたメアリ・ルーにとっては母親であり姉であり大切な友達。かけがえのない存在だったのだ。
メアリ・ルーは、トマシーナを手厚く葬ると同時に、敬愛していた父親も心の中で殺してしまった。それは彼女にとっては自分自身をも殺すことと同義の行為であった。
最早生きる希望のすべてを失ってしまったメアリ・ルーは、食べ物も受け付けず次第に衰弱し、やがて死を待つばかりとなってしまう。

無神論者で傲慢だったマクデューイの苦悩がここから始まる。
牧師である友人のアンガスとの非常に有意義な対話にも、心を動かされはしても道を拓くことはできない。
医者にも匙を投げられてしまう。

転機となったのは、人里を離れ、森に住む"魔女"と噂されるローリーとの出会い。
彼女は自然を愛し動物を愛し、傷ついた生き物を優しく癒す。
彼女と触れ合う中で、マクデューイは長い間閉じていた目と耳を開かれ、次第に大きく変わってゆくこととなる。

祈ることを知る

生かされて今が在ることを知る

しかしもうすべては遅過ぎるのか…。


クライマックスは、まさかの大ドンデン返しに震えるほどの驚きと大感動の嵐。
ファンタジーと現実の見事な融合に大いに魅せられた。

猫が好きならもちろん、猫が好きではない人も楽しめること請け合い。
もう一匹の主人公ともいえる神様猫「タリタ」こと「バスト・ラー」の、神秘に満ちた語りと共に、その豊かで示唆に富んだ魂の物語を、じっくりと堪能してみてほしい。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村
↑猫はやっぱり神様だと思う。

テーマ 書評
ジャンル | 小説・文学

ジェニィ

ジェニィ (新潮文庫)ジェニィ (新潮文庫)
(1979/07)
ポール・ギャリコ、Paul Gallico 他

商品詳細を見る

自他共に認める遅読の私でも、年月を経るにつれ所蔵本は溜まる一方である。
そのうち整理しなきゃと思っているのだが、どんなにたくさんの本を手放すことになっても、これだけは絶対に手元に置いておきたいと思っている本が数冊ある。
この「ジェニィ」もそのうちの一冊に加わった。

私はジェニィが愛しくて愛しくてならない。できればずっと胸に抱いて、死んだらこの本と一緒に葬ってほしいぐらい。

猫好きの少年ピーターが交通事故に遭い、気が付いたら猫の姿になっていたところから物語は始まる。
家から放り出され、慣れない猫の身でなにがなんだかわからないうちにあちこち彷徨い、果てにはボス猫にやられて瀕死の状態で横たわっていたピーターを救ったのが、一匹の雌猫「ジェニィ」だった。
ジェニィは、「ぼくは実は人間なんだ」というピーターの言葉に驚きながらも、何も知らないピーターに猫の掟を叩き込む。
ねずみの捕え方。正しい身づくろいの方法。そして何かあったら身づくろい、何はなくとも身づくろいという猫のたしなみ。ほおヒゲが教えてくれる正しい方向。
作者は、実はピーターのように猫だった時代があるのじゃないかと疑うほどに猫の描写がリアルで驚かされる。
猫好きならもれなくうっとりすること間違いなし。

その後の二匹の心躍る冒険譚は、終始ピーターの視点で進んでゆく。
ジェニィは、ピーターにとってもちろんかけがえのない唯一の存在ではあったが、家庭の愛に飢えていた彼には、それはどちらかと言えば惜しみない愛を与えてくれる母であり、姉という対象だったように思う。
しかしジェニィにとってのピーターは…。

これは私の持論なのだが、男はいくつになっても、いや死ぬまで子どもだけれど、女は最初から女で死ぬまで女なのだ。
ジェニィを「理想の女性像」と評する男性の声は多いけれど、ジェニィの献身と寛大さを見て単純にそう思っているのだとしたら、それは随分浅墓な考えだと私は思う。

ピーターを待っていたジェニィの心はどうだったのか。
ただ穏やかに、愛する男の帰還を待っていたと思うのか。

手酷い裏切りに、傷つかないものはいない。
相手を愛していればいるほど、その傷は深く、癒されがたいものとなる。
ジェニイは別に聖母でもなんでもなく、ただの女である。
強い愛情は、時に憎悪をも呼び込む。
私は、ジェニィは、女として、ピーターが許せなかったのだと思う。
愛情と激しい憎しみの念に引き裂かれたジェニィの気持ちを思うと、胸が詰まる思いがする。

それだけに、あのエピローグを、"大団円"といい、大人のファンタジーでしたで片付けてしまうのは、あまりに悲しく痛ましい。
自分が止むにやまれぬ激情の余り取ってしまった行動の結果に、ジェニィはきっと死ぬまで後悔し続けたことだろう。

一方、何も知らないまま、これからを生きてゆくピーター。
けれど、ピーターの心のどこか奥深くには、きっとずっとジェニィが住んでいるに違いない。そう信じたい。


日本で出版されたのは、もう随分前なので、訳文が少々古臭いのが唯一残念なところ。
出来れば、新訳で、再度出版していただけたなら、そしてもっと色んな人に、こんなにも素晴らしい猫がいることを知ってもらえたら、と心から願っている。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村
↑猫になってみたい~という人は一票を。

テーマ 書評
ジャンル | 小説・文学

アメーバなう
オススメ
プロフィール

道楽猫

Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
でも家事は忘れても(・_・)読書は忘れない。
そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
メールフォーム
メールはこちら>>

*上(別窓)のメールフォームが表示・動作しない場合はこちら

検索フォーム
今読んでる本
dorakunekoの今読んでる本
リンク
つぶやき
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

BK1
書評の鉄人
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。