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秋の牢獄

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)秋の牢獄 (角川ホラー文庫)
(2010/09/25)
恒川 光太郎

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この小説について、「ホラーではない」「恒川作品らしい怖さがない」と言う人がいる。
そういう人は、たぶん幸いにもそれまでの人生に於いて一度も何処かに囚われた経験がない人なのだろう。
「どこにも行けない」「出られない」恐怖は、自らが経験してみないとわからないものなのかもしれない。

昔、一度だけエレベーターの中にたった一人で閉じ込められたことがある。
降下の途中でいきなりがくん、と箱が止まり、緊急ボタンを押してもだれも応答してくれない。
時間にして僅か30分程度ではあったが、その時の恐ろしさは今でも忘れられない。
「家の中に入れない」ことと並んで、「押し入れや物置に閉じ込めて出さない」というのは子どものお仕置きとしても昔からよく行われている。
それほどに、「出られない」という状態は人にとって大変な恐怖なのだ。

表題作の「秋の牢獄」は、それに加えて「これからどうなるかわからない」という恐怖までが加味されている。
その象徴は「北風伯爵」という得体の知れない存在として描かれる。
なんたって"北風"なのだ。
これが「春風伯爵」なら途端にメルヘンな世界になってしまい、希望に満ちた明日が約束されている気にもなるけれど、秋の次は冬が待っているわけだから、抜け出した後もどうなるかわからないといった絶望をも予感させる。だからこそ恐ろしい。
けれど。
私も主人公と同様、未来を信じたい。
歌にもあるじゃないか。
明日という字は明るい日と書くのだよ。

2つ目のお話は「神家没落」。
「迷い家伝説」は色々あるが、どのパターンに於いても、通常、神の家である迷い家は一度訪れた後は同じ者には二度と見つけることはできない。
しかし、この物語では主人公はこの「迷い家」に囚われてしまう。
そこで彼はいつしかまったりスローライフを満喫することとなるのだが、その彼が「この人なら」と後を継がせた人物は実は…。

その住処を神の家にするも鬼の棲家に変えてしまうも、住む者次第ということか。
非常に示唆に富んだ深いお話だった。

最後は「幻は夜に成長する」。
囚われの超能力者は心の裡に魔物を育てていた。
体は蹂躙できても心までは縛ることはできない。
物語のその後を想像してわくわくする。
これは是非長編でじっくり読んでみたい。

それにしても、恒川光太郎の描く世界は、何故こんなにもはかなく美しいのか。
しんとした静謐さと、ひんやりと張り詰めた空気。
心の中の小さな炎が微風に揺らめく。
その危うい焦燥感が何故か心地よい。

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日々子育てに仕事に大忙し。
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