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モンスター

モンスター (幻冬舎文庫)モンスター (幻冬舎文庫)
(2012/04/12)
百田 尚樹

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「本が好き!」様より献本していただきました。いつもありがとうございます!

この作者の本を読むのは「永遠の0」に続き2作目。
「永遠の0」がとても良かっただけに、大変期待をして手に取りました。

元来、考え方が割合保守的な私ですが、実は整形手術に関しては否定派ではありません。
もちろん、程度の問題はありますが、「バケモノ」と揶揄されるほど醜い女性が整形によって見事に変身し、生き難い世の中を少しでも明るく楽しく生きていけるようになるのであれば、むしろそれは歓迎されるべきものではないでしょうか。
第一、女にとって「化粧は社会人としてのたしなみ」なんて言われるのですよ。「美しく身ぎれいに」いることが世の中で求められているのならば、すっぴんとは別人と思えるほどの化粧を毎日毎日飽きずに時間をかけて繰り返す女性と、どんっ!と整形手術にお金をかける女性との間に、それほどの違いがあるとは私には思えないのです。
いずれにしろ「化けて」いるには違いがないでしょう。
なのに何故、「整形美人」はこれほどまでに非難されるのでしょうね。
生まれ持った美しか認められないのならば、「化粧美人」だって同じく非難されてしかるべきでしょう。

一口に整形と言いますが、主人公和子の努力は並大抵ではないのです。
それこそ地を這うような生活をして金を作り、少しずつ自分を変えて行ったのです。
そんな彼女を「バカじゃないか」と嘲笑うことは簡単です。価値観が違えば、彼女が整形に注ぎ込んだ金はドブに捨てたようなものとしか思えないでしょう。
事実、花の季節は短く儚いものです。きっと彼女があのまま無事に生活していけたとしても、他人に羨まれもてはやされるのもほんの一時に過ぎなかったでしょう。

けれども、それがどんな生き方であれ、悔しさをバネにして上を目指すことを私は否定したくありません。
私自身、ほんのささやかなプライドを守るために、他人から見れば本当にくだらないと思えることで血のにじむような努力をして"世間にとっての普通"を手に入れたことがあります。
和子の生き方は、確かに痛ましいけれど、だからこそ、そんな彼女の苦しみが少しは理解できてしまう私がいるのも事実なのです。

人間なんて本当に浅はかな生き物です。
男も女も、等しく皆、見た目や印象でしか物事を判断できない。
美しくないものは、目の端にも入れない。脳が「見なかったこと」にさえできてしまう。

和子がどんどん美しくなり、彼女を取り巻く周囲の反応が見事に変わってゆく様は、読んでいて爽快感がありました。スライムにさえやられていた勇者が、ついにラスボスを倒すまでに成長してゆく「ドラクエ」のプレイを見ているようで、彼女に見惚れる男の姿に「ざまあみろ」と、いつしか私も喝采を送っていました。

他人の人生をああだこうだ言う権利は誰にもないし、彼女に人生を狂わされた男にしても、それは狂ったほうがバカなのです。
和子を悪女だとも思わないし、彼女の人生を不幸だったとも私は思いたくありません。むしろ堂々と自分の人生を最大限に"生き切った"満足の生涯だったのではないでしょうか。

私は、そんな生き方をしたいとはまったく思わないけれど。


花のいのちはみじかくて

苦しきことのみ多かれど

風も吹くなり

雲も光るなり

(林芙美子/「浮雲」)



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裏返しの男

裏返しの男 (創元推理文庫)裏返しの男 (創元推理文庫)
(2012/01/27)
フレッド・ヴァルガス

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本が好き!」様より献本をいただきました。感謝!

なんと言っても、表紙絵がいいです。
この表紙にまず飛び付きました。
獲物を探して暗い夜の森を徘徊している途中にふと視線を感じてこちらを振り向いた、その一瞬を切り取ったかのような印象的な一匹の狼の雄姿。月明かりに照らされて、灰色の毛が銀に輝いている。

私、昔から鼻面の長いイキモノが大好きなんです。だから狼はすこぶるいい!
そんなわけで何の前知識もなく読み始めたわけですが。

お、面白かった!
いやー、読んでよかったよ。
読み終えて初めて、タイトルの「裏返し」という言葉に二重の意味が込められていることがわかって驚きました。
体の内側に毛を隠していて、変身すると内側の毛が裏返って外側に出てくる、という狼男の言い伝えを表しただけのタイトルであると読者に思わせておいて、実はそれだけではなく、身の内に隠された狼の本性を、夜になると剥き出しにする、とある人物をも象徴していたというわけなのです。
なるほどなるほど。
そう考えると、なんと秀逸なタイトルであることよ。

正直、序盤は退屈でしょうがなかったのです。
登場人物がことごとく魅力がないし、何より、物語中でいきなりわけのわからない老人と黒人の若者と共にオンボロの羊運搬車で犯人追跡の旅に出るカミーユの行動が意味不明…。
で、これは付いていけない、感情移入が出来ない…と投げ出しそうになってしまいました。

でもね。
カミーユの元恋人である、アダムスベルグ刑事が追跡に加わったあたりから、物語が俄然面白くなってくるのです。
アダムスベルグは「なんとなく直感で犯人がわかるだけで推理らしい推理をしていない」などと揶揄されているけれど、いえいえ決してそんなことはないのです。
ああいう天才は、脳の中で、どこか多次元世界的な世界を構築して、その中で緻密な計算を行って、その結果をアウトプットしているのです。入力と出力の間がブラックボックスだから、普通の人には「直感」としか捉えられないだけなのです。うん、きっとそうだそうに違いないよ(・_・)。

それから、素晴らしいのは何と言っても、老羊飼いの"ハリバン"。
何故かソリマンに"だけ"有効な魔法の杖(笑)を頼りにすっくと立ち、
「油断のならない酒」を皆に振る舞う。
若さと、犯人への憎しみ故に、ともすれば暴走しがちなソリマンを、その杖で「落ち着け」と諭す。
女性に対する礼儀を決して忘れない。
実に素晴らしい。初対面での印象は決して良くないのに、付き合うほどに魅力が増す、こういういぶし銀のような人物は大好きです。
特に、ハリバンとアダムスベルグの会話はウイットに富んでいて、思わずクスっとさせられます。

物語が終盤を迎え、意外な犯人の提示と共に、物語は当に"裏返る"。
そのどんでん返しもお見事でした。

いやぁ、いいなぁ、このシリーズ。
実は、第一作目は未読なのですが、俄然興味が湧いてきました。
第一作目も今後発表される新作も、是非読みたい。

ああ、だけど、あの老羊飼いにはきっともう会えないのでしょうね。
それは実に残念。
私には、いまでも、フランスの片田舎の牧場に行けば、老ハリバンが杖を頼りにすっくと立っているような気がしてならないのです。

「いい足、いいケツ、いい眼」!


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アインシュタインの神

アインシュタインの神アインシュタインの神
(2010/10/01)
日和 真之

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意思を持つ人工知能、とりわけマザーという名を聞くと、私はどうしても、竹宮惠子の「地球へ」を思い出す。
元々こういったテーマのお話は大好物なので、わくわくしながら手に取った。

平凡な若いサラリーマンが、ある日突然ホームレスとなり謎の死を遂げる。
別の会社員は、有り得ない状況による事故で、突然命を絶たれた。

一見何の繋がりもないように見えた、これらいくつかの事件は、実はすべてあるひとつの企業に繋がっていた…。

掴みは、とっても良かった。
真っ暗な地階で突然会社員の身に迫る恐怖の描写などかなり真に迫っており、数々の謎の提示と共にその後の展開に非常に期待を持つことができた。

しかし。
残念ながら、お話が進むにつれ、小説として読むには少々苦しい展開となってゆく。
そもそも、主人公たちが事件に関わろうとした動機が曖昧。
冒頭の、サラリーマンがホームレスとなってしまった事件の経緯も、あまりにこじつけめいていて不自然。
何より致命的なのは、人物に個性があまり感じられないこと。
北斗も長田も圭子も、なんだかみんな薄ぼんやりと良い人たちで、はっきりとした個性を持っているのは羽黒ぐらい。なので感情移入が難しかった。

また、私には登場人物の名前の呼び方が非常に気になった。
「北斗さん」「隆志さん」
当人たちは旧友どうしなのでそれでもいいが、その後の登場人物たちも皆、彼らを下の名前で呼ぶのだ。
ふつう大人が、それも出会ったばかりの人の名を、ファーストネームで呼ぶだろうか。
ここに非常に違和感を覚えた。
なんだか小姑のように細かい指摘をして申し訳ないのだが、物語がSFなどの完全なフィクションの世界であればあるほど、そういった細かい点にリアリティがないと、読んでいてツライのである。

ただ、さすが人工知能を長年研究している作者らしく、現在の人工知能技術の話やインターセル構想については、読んでいてとても興味深く面白かった。
人工知能が意識、というより意思?を獲得してゆく経緯は納得できるものであったし、何よりマザーそのものが人類を制圧しようなんていうぶっとんだ設定ではなく、あくまでそれを人間が利用して理想世界を築こうとする、というあたりが現実的で良かったと思う。

もう少しお話を整理して登場人物にふくらみを持たせれば、とても面白い近未来SF映画ができるんじゃないかな。

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猫語の教科書

猫語の教科書 (ちくま文庫)猫語の教科書 (ちくま文庫)
(1998/12)
ポール ギャリコ、スザンヌ サース 他

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面白いと思える本には2種類あるように思う。
ページをめくるのももどかしく、その世界に引き込まれ、あっと言う間に読了してしまう本と、美味しいおやつを楽しむように、ちびちびとすこーしずつ時間をかけてゆっくりと読み進める本。

私にとってこの本は後者。
読んでいる最中、ずっとくすくすにやにやが止まらなかった。
いや、えへらえへらだったかも(笑)。

だって

人間の"躾け方"が書いてある本なんですよ?
猫が人間の家を乗っ取る方法が書いてあるんですよ!

最初の方の、人間の男を躾ける方法なんてもう、抱腹絶倒!
まーさーに!
うちにいた猫と夫の関係なのだもの。

夫はずっと悦に入っていた。
「あの子は自分が呼ぶと、何を置いてもとんで来る。そして撫でてやるとゴロゴロとのどを鳴らして喜んでくれる。うちで一番あの子に懐かれているのは自分なのだ」
と。

だけど私は知っていた。
夜、寝る前にそうやってゴロゴロ甘えていた猫が、夫が寝入ると、さっさと寝床を抜け出して
「しょうがないわねぇ」
てな顔をしてすたすた歩いてゆくことを。
私は、これを「猫による夫の寝かし付け」とこっそり呼んでいた。

本当に、ギャリコはかつて猫だったことがあるに違いない。
なんたって、猫にとっての秘密兵器である「声を出さないニャーオ」を知っているし、
猫が書いた文字を解読できたのが、その何よりの証拠(…笑)

随所に散りばめられたモノクロの写真をながめるのもまた楽しい。
著者さんはとても美形な猫様なのだ。

うっとりと、ゆめごこちで本を閉じ、また開き。
一冊で、二度も三度も楽しめる、お得感満載の逸品。
(なんの営業トークだよ)

ああ、私もまた猫に家を乗っ取られたい。
そして夫を躾け直してもらいたい。

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トマシーナ

トマシーナ (創元推理文庫)トマシーナ (創元推理文庫)
(2004/05/25)
ポール・ギャリコ

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ずいぶん前に書かれた本だけれども、100年、いや1000年読み継いでもらいたい名作。

かの「ジェニィ」を大叔母に持つ由緒正しきトマシーナは、気高くも慎み深く礼儀正しく、猫の良いところをギュッと濃縮したかのような愛すべき雌猫。
「ですます」調で丁寧に話し、飼い主宅への宿賃として献上するネズミを捕獲する手段を、何日もかけて用意周到に実行する辛抱強さとアタマの良さも兼ね備えている。そして世話になっている家の娘メアリ・ルーに、自分の計画を邪魔されあちこち引っ張り回されたりしても文句も言わずに大人しく従っている。トマシーナはメアリ・ルーのお守り役も果たしているのだ。

けれども、一家の主であるマクデューイは、そんなトマシーナには目もくれず、トマシーナの素晴らしさに気付きもしない。
むしろ、彼が唯一溺愛している娘のメアリ・ルーが、自分よりもトマシーナにべったりであることを快く思っていないフシがあり、トマシーナを邪険に扱ったりする。
そんなマクデューイの職業はなんと獣医。
本当は人間のお医者さんになりたかったのだが、獣医だった父親の跡を無理矢理継がされた形であるため、獣医の仕事には全く熱意を持っていない。むしろ最愛の妻を動物からの病気感染で亡くしてからは、彼の動物嫌いには益々拍車がかかり、少しでも治る見込みがないと診断した動物は、飼い主の気持ちも考えずさっさと安楽死させてしまう始末。

そして運命の日。
憐れトマシーナは、多忙なマクデューイのおざなりな診断で「髄膜炎でもう治る見込みがない」とあっさり安楽死させられてしまうのだ。
その日からすべての歯車が狂ってしまった。
トマシーナはただの猫ではない。幼くして母親を亡くしたメアリ・ルーにとっては母親であり姉であり大切な友達。かけがえのない存在だったのだ。
メアリ・ルーは、トマシーナを手厚く葬ると同時に、敬愛していた父親も心の中で殺してしまった。それは彼女にとっては自分自身をも殺すことと同義の行為であった。
最早生きる希望のすべてを失ってしまったメアリ・ルーは、食べ物も受け付けず次第に衰弱し、やがて死を待つばかりとなってしまう。

無神論者で傲慢だったマクデューイの苦悩がここから始まる。
牧師である友人のアンガスとの非常に有意義な対話にも、心を動かされはしても道を拓くことはできない。
医者にも匙を投げられてしまう。

転機となったのは、人里を離れ、森に住む"魔女"と噂されるローリーとの出会い。
彼女は自然を愛し動物を愛し、傷ついた生き物を優しく癒す。
彼女と触れ合う中で、マクデューイは長い間閉じていた目と耳を開かれ、次第に大きく変わってゆくこととなる。

祈ることを知る

生かされて今が在ることを知る

しかしもうすべては遅過ぎるのか…。


クライマックスは、まさかの大ドンデン返しに震えるほどの驚きと大感動の嵐。
ファンタジーと現実の見事な融合に大いに魅せられた。

猫が好きならもちろん、猫が好きではない人も楽しめること請け合い。
もう一匹の主人公ともいえる神様猫「タリタ」こと「バスト・ラー」の、神秘に満ちた語りと共に、その豊かで示唆に富んだ魂の物語を、じっくりと堪能してみてほしい。

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↑猫はやっぱり神様だと思う。

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Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
でも家事は忘れても(・_・)読書は忘れない。
そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

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