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ドゥームズデイ・ブック

ドゥームズデイ・ブック〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)ドゥームズデイ・ブック〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
(2003/03)
コニー ウィリス

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「航路」ですっかりコニー・ウィリスファンになった私。
表紙絵がなんだかなぁ^^;なのですが、前知識ゼロの状態で手に取ってみました。

これもタイムトラベルものです。英語圏SFの三大タイトルと言われるネビュラ賞、ヒューゴー賞、ローカス賞の三冠を独占したというだけあって、SFという枠では収まり切らない、非常に文学的な面白さがありました。

21世紀のオックスフォード大学の女子学生キヴリンが、研究のため、中世へのタイムトラベルを行う。
一方、手塩にかけた自分の学生を、そんな危険なところへは行かせたくなかった、ダンワージー教授。
物語は、キヴリンの中世時代とダンワージー教授の現代が平行して語られます。

中世でも比較的安全だと言われる時代のイギリスに跳んだはずのキヴリンは、何故かペストが蔓延している時代に間違って跳ばされ、しかも着いた早々、自らが原因不明の病に倒れ、元の時代に戻るためのポイントが失われてしまいます。もちろん、考え得る限りの予防策は講じていたはずなのに何故…。
そして、21世紀でも、突然未知のウイルスの猛威にさらされ、人々が次々に倒れ、パニック状態に。
キヴリンを中世に送り込んだ研究者もまた、同じ病に倒れてしまい、かくて彼女を回収する手段は現代に於いても失われてしまうのです。

「何かがおかしい…」

中世において、ペストは不治の伝染病です。
いったん感染者が出てしまえば、人々はなすすべもなく、次々に人が死んでいくのを、ただ見送るしかないのです。
その真っ只中で、無駄だと知りつつも懸命に対策を講じ、人々を救おうとするキヴリンの姿に心打たれます。
そこに至るまの情景描写や人物描写をこれでもかと丁寧に積み重ねてあるだけに、この怒涛の展開では本当に物語の世界に引き込まれ、読む者を巻き込んでぐいぐい引っ張ってくれます。
それにしても、作者は本当にこの時代にタイムトラベルして"見てきた"んじゃないかと思えるほど、真に迫った描写をしていることに驚かされます。

また、一方の現代においても、未知のウイルスであれば根本的な対策がないのは同じ事。
重苦しさから言えば、それはもちろん中世のほうに軍配は上がります。21世紀のパニック具合は、コミカルな要素も織り込まれ、それほどの閉塞感はありません。
それでも、やはり、未知のものに対する恐怖というのは、いつの時代も普遍的なもので、人々の本能や人間性を見事に浮かび上がらせるものだとつくづく感じます。

よく夢で見る、"色々な障害のためなかなか目的地に辿り着けない"もどかしさを、ダンワージーの奔走する姿に重ね合わせ、ハラハラしつつ、おしまいまで一気に読まされてしまいました。

「来てくださると思ってました」

そうなんですね。きっと、キヴリンがかの時代に跳ばされてしまったのも、間違いではなく、必然。
あの時代が、彼女を呼び寄せたのでしょう。

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封印再度

封印再度 (講談社文庫)封印再度 (講談社文庫)
(2000/03/15)
森 博嗣

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「封印再度」WHO INSIDE
という日本語と英語のタイトルが絶妙で印象的。

謎の残る少し昔の人物の死と、その場に残されていた鍵の入った壷と、そのカギでなければ決して開けられないハコ。しかし、壷から鍵は決して取り出せない。その謎を解こうと奔走する萌絵の前に新たな事件が…。壷に入れられたカギは果たして取り出せるのか。
そして萌絵がなななんと!!…どうする犀川!!

てな雰囲気でもー、続きが気になって気になって一気に読まされてしまいました。さすが森博嗣。
壷とカギのトリックは最後に明かされますが、「そんなの知らなかったもん」と思わずジタバタしてしまいました(笑)。なんか、クソー!!という感じ。まぁいいんだけど。

この話を読むと、萌絵が嫌いだった人は更に嫌いに、好きだった人は更に好きになることでしょう。
私個人としてはあのクリスマスケーキのことがどうしても納得いかない。ほんとにそれでいーんか?萌絵お嬢様…。
森ファンの間で物議をかもすことになった「例のこと」よりも私はこっちのほうが許せなかった。こんなヤツと結婚なんてダメっすよ、犀川先生(笑)。
だけど、「例の事件」でうろたえて暴走する犀川先生がとても可愛かった(笑)。いつも落ち着いていて飄々としている犀川先生の意外な一面を知った気がしました。

最後に瀬戸さんがちらっと登場してて、先に「有限と微小のパン」を読んでいた私は思わずニタリ(笑)。
こんなところに伏線が張られていたんですねぇ。してやられました。
んー、でも結局私にとって一番の謎は国枝桃子の「ごちそうさま」メールだったかも。
あれが一番面白かったように思う。

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花の下にて春死なむ

花の下にて春死なむ (講談社文庫)花の下にて春死なむ (講談社文庫)
(2001/12/14)
北森 鴻

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「新鮮な、若鶏が手に入ったので、たまねぎと煮て、たまごでとじて炊きたてのご飯に乗せてみました」


…それはただの親子丼(・_・)。

いいじゃないか。
ただの親子丼でも、『香菜里屋』のマスター風に言うと、途端にごちそうに思えてくるのが素晴らしい。

この本に出てくる安楽椅子探偵役の、ビアバー『香菜里屋』のマスターは、万人受けしそうな年齢不詳な人物。
とても魅力があるんだけど、ちょっとステレオタイプ過ぎかな。よしながふみや今市子にイラストにしてもらえたら、きっと雰囲気出るだろうなぁ。
(どちらもBL系の人だというあたり、私もちょっとアレだな。←アレってなんだ)

肝心のお話の方だが、タイトルにもなっている、最初の「花の下にて春死なむ」は、『香菜里屋』の料理の如く、絶品。でも語りすぎると、せっかくの味が台無しになってしまいそうなので、多くは語るまい。
ただただ胸を抉られるような、切ない切ない物語。草魚の故郷にまつわるミステリーに、早過ぎる桜の開花のミステリーを絡ませ、見事な話の展開だった。

ただ、6つのお話の中には、ちょっと、これはどうかなという残念なものも。
特に「殺人者の赤い手」は、無理矢理なこじつけ感が拭えない。
いくらなんでも、犯人の設定が苦し過ぎて興醒め。都市伝説の誕生秘話は意表を突かれた感じで良かったと思うのだけれどね。
「七皿は多すぎる」も、発想はいいけど、ちょっと納得し難い話だなぁ。
だいたい、毎日人のいない昼間に回転寿司屋を訪れて鮪ばっかり食べるおぢさんなんて、怪しすぎてあまりに目立つでしょ。
作中の人物の創作物語だとしても、あんまり出来は良くないし、オチもあやふや。
私個人としては、この二つは要らなかったんじゃないかなと思う。

ラストは、また第一話に繋がる物語に戻り、これもまた、何とも切ない物語で、ミステリーとしても素晴らしく、クオリティが高い。

冬の寒い日に、温かい布団の中で、美味しい食べ物にヨダレを垂らしつつ(笑)ぬくぬくと、ゆっくりと楽しみたい一冊。

『香菜里屋』のマスターの新しい謎解きは、残念ながらもう決して披露されることはない。
けれど、いまでもひっそりと、本当にどこかの街で、あのマスターは、訪れる客たちに、美味しい料理をふるまい、謎解きに興じているんじゃないか、なんて、楽しい想像をしてしまうのだ。

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往復書簡

往復書簡往復書簡
(2010/09/21)
湊 かなえ

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最後に自筆の手紙を書いたのはいつだろう。
それは一体だれに宛てたものだったろう。
ああ、そうだ。きっとあれだ。
履歴書を郵送した折に付けた送り状(笑)。
考えてみると、Eメール全盛の現在、時間も手間もかかる手紙をしたためることはまずない。
そうせざるを得ない状況にあるか、もしくは自分の印象をよくする目的か。
文通とか、私もよくやったもんだ。今から思えば楽しかったな。私が子どもの頃は雑誌に「ペンパル募集」とかいうコーナーがよくあって、個人の住所と名前がフツーに掲載されていたなぁ。それを誰かに悪用されるとか考えもしなかった、古き良き時代…。
レターセットも凝ったものが多く、匂い付きなんてものもあった。
いや特別匂い付きの便箋でなくても、書き手の匂いを感じることもあったなぁ。それはメールでは無理なことで、手紙ならではの良さだろうな。

というわけで「往復書簡」。
3つのストーリーが、それぞれ、手紙の交換で語られるわけだが、最初のお話は、ちと無理があったかなぁ。
消去法でいくと、途中で筋書きがわかっちゃったし、わかった上でも、「うーん…無理ダロ」という印象。
"作り話"の域を超えてなくて残念だった。
でも、自分が何気なく口にした言葉や深く考えずにとった行動が、思いもかけず他人に影響を与えていることってあるのだなぁ、とちょっと怖くなってしまった。そして外見だけでは、心の中まではわからないということ。
私も心しておこう。
2つ目は、ずっしりと心に重く響く、余韻のあるお話。
それぞれの生徒の心の傷、そして先生の気持ちを考えると、涙が止まらなかった。
でもみんな、それぞれに、事実を受け止め、消化して、自分なりに歩いていくしかないのだ。
最後の展開は、ちょっと私には読めなかったなぁ。嬉しい驚きであり、救いのある結末で良かった。
3つ目のストーリーは、初めはただの遠距離恋愛中の恋人どうしのラブレターの交換から始まる。
しかしラストに向かって、とある事件の真相が2転3転し、目が離せない展開に。
"知らない方が幸せ"とか"墓場まで持っていくべき事実"ってのはやっぱりあるよね。
読み手にどのようにも受け止めることのできるエンディングは良かった。
私は、でもやっぱり、あれは幸せな終わりなのだと信じたい。

真実はひとつでも、受け止め方によって、物事は様々な姿に形を変える。
そして、関わる人の数だけ、影響をばら撒く。
みんな、物事の一面しか見ることができない。傍観しているだけのつもりでも、俯瞰することは無理だから。
たとえば鉛筆は、正面から見れば長方形でも、実は六角形だったりする。そんなふうに、本当のことなんて、なかなか見極めるのは難しいし、それはそれでいいのかもしれない。
ただちょっと、時々は立ち止まって、理解できない他人の行動も「そんなこともあるかもしれないね」と認めることのできる自分でありたい。

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幻惑の死と使徒

幻惑の死と使途 (講談社文庫)幻惑の死と使途 (講談社文庫)
(2000/11/15)
森 博嗣

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「諸君が、一度でも私の名を叫べば、どんな密室からも抜け出してみせよう」
いかなる状況からも奇跡の脱出を果たす天才マジシャン・有里匠幻が衆人環視のショーの最中に殺された。しかも遺体は、霊柩車の中から消失。これは匠幻最後の脱出か?~(裏表紙より)


SMシリーズ6作目。
「夏のレプリカ」と同時間軸に起こったもうひとつのミステリー。
というよりこっちが本命で「夏のレプリカ」がオマケか。
計算し尽くされた見事な構成。何重にも張り巡らされたトリックは圧巻でした。

またしても犀川にしてやられたカタチの萌絵お嬢さま(笑)。
せっかく「謎はすべて解けた」とばかりに関係者を一堂に集めて探偵よろしく謎解きを始めたのに、結局事の成り行きを飄々と眺めていただけの犀川にその解答をひっくり返される。
確かに萌絵お嬢さまの解答では、謎が残るしすっきりしない。
なんだかなぁと思っていたところで真相が明らかにされ、「おお」という感じでした。

今回は犀川先生と萌絵の会話より犀川先生VS浜中くんの会話が面白かった。
金魚すくいを知らない萌絵は相変わらずお嬢さまパワー炸裂。

「人は名前のために生きている」か。そうかもしれない。さすが深いなぁ、犀川先生。

犀川先生語録
「何かに気がついて、新しい世界が見えたりするたびに、違うところも見えてくる。自分自身も見えてくるんだ。面白いと思ったり、何かに感動したりするたびに、同じ分だけ、全然関係ない他のことにも気がつく。これは、どこかでバランスをとろうとするのかもしれないね。たとえば合理的なことを一つ知ると、感情的なことが一つ理解できる。どうも、そういうふうに人間はできているみたいだ。」


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さよならダイノサウルス

さよならダイノサウルス (ハヤカワ文庫SF)さよならダイノサウルス (ハヤカワ文庫SF)
(1996/10)
ロバート・J. ソウヤー

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恐竜絶滅の謎を解明するため、六千五百万年の過去にタイムトラベルをした古生物学者「ブランディ」と「クリックス」の二人。
二人がそこで出会ったのは「待ってよぅ」と言葉をしゃべりながら追いかけてくる一匹の恐竜だった…。

いやー。やっぱソウヤーはすごいなぁ。
あとがきで訳者が語っていたが

1 恐竜はなぜ絶滅したのか
2 恐竜はなぜあれほど巨大化できたのか
3 白亜紀と第三紀の境界になぜイリジウムの豊富な地層があるのか
4 恐竜の肉はうまいのか
5 火星はなぜ死の惑星になったのか
6 時間旅行はなぜ可能でなければならないのか

これらの謎(4は解明されたわけじゃないけど(笑))が実にうまく解明される。
物理学や古生物学に明るくない私なんか、うっかり本当のことなんじゃないかと信じかけてしまうほどに見事に。
しかもしかも、その絶滅の理由がねぇ…。
なんたる皮肉か。

それ以上にびっくりしたのが、「6」について。
この逆説はすごいと思った。

「可能」ではなく「可能でなければならない」

のだ。
種を植えなければ育たないのである。
…おっと、これ以上はネタバレになるのでやめとこう。

それと、主人公が、カッコイイ青年とかじゃなく、情けない中年ってとこがまたいい。
この主人公の、何事にも慎重で、決断を下すことが出来ず、石橋を叩いて叩いて叩きすぎて壊してしまうようなところが、読んでる私自身を投影しているようで、ちょっと心に痛い(笑)。
挙句に、疑心暗鬼にかられているうちに妻を寝盗られ、あまつさえ、寝盗った相手とコンビを組んではるばる六千五百万年の過去への二人旅に出るはめに陥るなんて。

「行動しないというのは、それ自体がひとつの決断」

繰り返し語られるこの言葉が心に刺さった。
私も、行動しなきゃね。

より良い過去のために…。

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うふふ

「本が好き!」で応募していた、湊かなえさんの「往復書簡」の献本に当選して今からわくわく。
「リアル読書会」には行けないけれど、当日の実況も楽しみにしてます。
同じ本でも、人によって感じ方は様々で、目からウロコなこと多し。

また、自分自身にしたって、初読と再読では感じ方が全く違っていたりするし、ほんと面白いもんだなと思います。
初めて読んだときにはちっとも面白いと思えなかったものが、数年後に読み直すとびっくりするほど面白く感じたり、その逆もしかり。
一粒で何度も美味しい、だから読書はやめられないのだ。

「往復書簡」とは別に、某密林で注文していた北森鴻さんの本も2冊届いたし、うーん、これから忙しいぞ。

それにしても、北森鴻さん…まだまだこれからの人だったのに、惜しい人を亡くしました。
とても残念に思います。

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十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA

十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)
(1996/04)
貴志 祐介

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人に触れることでその人の心を読み取る超能力「エンバス」を持つ加茂由香里は、その能力を活かして、阪神大震災のボランティアとして被災者の心のケアをしていた時に、12の異なった人格を有する「多重人格障害」と思われる森谷千尋という少女に出会う。彼女の心に寄り添い、なんとか人格の統合を図ろうとする由香里は、千尋の心に潜む13番目の人格「ISOLA」の存在に気付く。凶暴で怨念に満ちた「ISOLA」とは一体何者なのか。

「イソラ」と言えば、怪談「雨月物語」の中のひとつ「吉備津の釜」に出てくる、恐ろしくも悲しいヒロイン「磯良」。この物語の「ISOLA」は雨月物語を読んだ千尋が知らず知らずのうちに生み出してしまった負の感情が人格となったものだと推論された。
当初はほとんど意識にのぼらずただ黒い怨念の塊として千尋の心に深く沈んでいたISOLAが次第に知性を持ち始め、千尋のカラダを自由に抜け出し千尋に害をなす者たちを抹殺していく。
暗い夜の中、憎悪を撒き散らしながら徘徊するISOLAを想像するとぞっとする恐怖を感じた。

そして由香里がそのエンバス能力で辿りついた驚愕の真実とは…。

物語が佳境に入り、何故「イソラ」が「磯良」でなく、「ISORA」でもなく「ISOLA」なのか、その答えを知ったときにあっと驚く展開がアナタを待っています。ふふふ、ビックリするよ(笑)。

最後まで飽きさせずにグイグイと読者を引っ張る展開は素晴らしい。
でも、ラストはちょっと期待ハズレ。
もう少し、あっとおどろくエンディングを見せてほしかったなぁ。

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てるてるあした

てるてるあした (幻冬舎文庫)てるてるあした (幻冬舎文庫)
(2008/02)
加納 朋子

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「ささらさや」の姉妹編。
だけど「ささらさや」を未読でも問題はない。
(もちろん併せて「ささらさや」も読んでおいた方がもっと楽しめるけど)

高校受験が終わり、首尾良く第一志望の高校に入学が決まって、お気楽な春休みを送っていたはずの主人公「照代」に、いきなり降りかかる不幸。突然の転落の人生(彼女にとっては)。
まぁそりゃ、"夜逃げ"をした両親と離ればなれになり、見ず知らずの遠い親戚の家にたった一人で身を寄せるはめになるなんて、ごくフツーの子供が受け止めるには、かなり過酷な状況だろう。
しかも照代はなまじお勉強が出来るだけにプライドがズタズタ。

何もかもに"苛立ち"、すべての人に"意地を張り"、"不遜"な態度をとる。
そんな照代の姿は、なんだか自分の少女時代を垣間見るようでこっ恥ずかしい(笑)。
照代は実はよくわかっているのだ。自分に何も力がないことを。そして魅力もないことを。
誰からも必要とされない自分。みじめな自分。それがわかるだけに"突っ張る"しか方法がなかったのだ。
そしてそんな自分が実は一番嫌い。

今の私ならわかる。
「あーあ。なんてまぁ、自意識過剰なんだろね。」
"遠い親戚"の久代さんも、きっとそう感じていたろう。

けれど、不思議な町「佐々良」で色んな人と関わるうちに、照代は成長してゆく。
「壊れた時計は松ちゃんが修理してくれた。ゾンビ自転車だって、見事に甦った。ガラスのリンゴは今頃金魚鉢になって、真っ赤な金魚を泳がせているかもしれない。」
「私も雑草になってやろうじゃんと思う。肥料なんてもらえなくても、たとえほとんど陽が当たらなくても、葉を茂らせ、根っこを張ってやる。たとえ踏まれたって、すぐに立ち上がってみせる。何度でも。」

そして、いつか照代は気付くのだ。自分の母親もただの愚かな人間であり、聖母マリアじゃないってことに。

きっと今の私みたいに、心が狭くて利己的でコンプレックスの塊で感情的でややこしい人間が、ただずるずると歳ばかり喰い、そして父親になったり母親になったりするのだ。
そうして、言っちゃいけないこととか、すごく適当なこととかをぺろっと言ったりする。あまつさえ、さっさと忘れる。子供の心に五寸釘を打ち込んでおきながら。無責任極まりないとはこのことだ。

そこに気付いた時、照代もまた、子供のままではいられなくなったのだろう。
照代の、若く柔軟な思考が羨ましくもある。

ラストに向かうまでに、何度も号泣させられた。電車の中で読んでいたのに(笑)。
人は皆、多かれ少なかれ何かを抱え、時に優しく、時に傲慢に生きてゆく。
願わくば、私も久代さんのように、背筋を伸ばして生きていきたい。

「てるてるあした。きょうはないても あしたはわらう。」

いい言葉だなぁ。
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航路

航路(上)航路(上)
(2002/10/08)
コニー ウィリス

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非常に長いこの物語、ひとことで言えば「臨死体験」とはいったい何か?を脳内物質の変化等を見て科学的に検証しようとしている科学者たちのドラマ。
と言っても「フラット・ライナーズ」みたいな胡散臭いその手のSFとは違って(実際物語の中で何度もこの「フラット・ライナーズ」について触れ、それがいかにばかげているかを語る)、至極真面目に作者なりの考察がなされている。

実験失敗のエピソードやいつまで経ってもスケジュールの合わない被験者の話などどうでもいい部分が多くて冗長だ、なんて書評も多く目にするが、その「どうでもいい部分」がたくさんあるからこそ、”臨死体験を薬物投与によって再現しようとする研究者の生活”なるものにリアリティがもたらされるんじゃなかろうか。それがなきゃ、もうどうしようもなく嘘臭い話になっちゃったはずだよ。そもそもあんな薬物を少し投与したぐらいで簡単に”臨死”状態が再現できるわけないんだし、そこらへんが既にSFなんだから。

死後の世界については、私ははっきり”ない”と思っている。
人間はカラダが滅んだら大自然に溶け込み、一体となる。それだけだ。
そこからまた新しい生命が生まれたとしても、それは元の人間とは大きな意味で言えば繋がっているけれど、個人レベルでは繋がってない、私はそう思っている。
だから臨死状態で見る様々なものの正体も、この科学者が推論するようなものだと思う。
けれど、それでも、ネタバレになってしまうのであまり語れないけれど、この物語は私に数多くの示唆を与えてくれた。

ひとつは、人の時間感覚は決して物理的な時間の流れとイコールではない、ということから生まれる私なりの推論。
たとえば、交通事故に遭った瞬間、ぶつかったのは一瞬のはずが奇妙に長い時間に感じられた、なんて体験を語る人はよく存在する。
また、意識を失っていたのは数秒なのにその間何ヶ月も経ったような気がした、と語る人もいる。ドラゴンボールにも”精神と時の部屋”なんてのがあったよね(笑)。
それと同様、人によっては臨死状態が、ずっとずっとずーーーっと、極端な話現実にはその人の通夜も葬式も終わった後もずーーっと続いている、なんてことも有り得るのではないかと言うこと。
つまりね、とっくに死んじゃって骨になって墓に入ってるあの人もこの人も、その人個人の意識時間ではまだ”生きている”のかもしれないなぁってこと。
説明が難しいな。意味不明なこと書いてるんだろうか私は(笑)。

そしてもうひとつは死に行く人にとって「死は決して全ての終わりではない」と思えたこと。
輪廻とかね、そういう話ではない。ただやっぱりそれはひとつの”旅立ち”なのだろうと、なんかすとんと腑に落ちたということ。
いろんなことがすんなり整理され、私なりに納得できた感じがする。

この小説は確かにフィクションであるし、ただのSFだろう。
けれど読み終えたとき静かに涙が流れ私は確かに救われた。
そういう出会いが、時に本にはある。

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理由

理由 (新潮文庫)理由 (新潮文庫)
(2004/06/29)
宮部 みゆき

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直木賞受賞作である社会派ミステリー。
嵐の夜、東京都荒川区の超高層マンションで起きた一家四人殺人事件。
この物語は、その事件の顛末の一部始終を一人のルポライターが事件の関係者にインタビューする形式で書かれている。
なのでまるでノンフィクションのルポを読んでいるかのような錯覚に襲われる。

裁判所による不動産競売のカラクリなど、非常に勉強になるところが多かった。占有屋なる職業(?)の存在もこの本によって初めて知ることになった。
ただしこの内容を面白いと思えるかどうかは好みが分かれるところだろうなぁ。私は結構面白いと思ったけど。

結果から見ればひとつの事件も、切り口を変えるといろんな断面が見える。
人にはそれぞれ事情があり、この事件の関係者の行動にもそれぞれの「理由」があるわけだ。
その一人一人の人物すべてに光を当て、その背景を丁寧に描写している。いろんな人間模様が入り混じってひとつの「出来事」が起こるわけだな。作者が書きたかったのも実はそういうところなのだろう。
なので、各人の背景についての記述が多過ぎてうんざり、だの蛇足だのという論評は間違っていると私は思う。その部分が抜けると「理由」というタイトルに意味がなくなる。
現実に一見複雑に見える事件だって、動機は案外単純なものだったりするのかもしれないよね。その単純な「理由」が積み重なって、取り返しのつかない「事件」に発展してしまうのだろう。

心に残った言葉
「人間には「見る」というシンプルな動作はできない。
できるのは「観察する」「見下す」「評価する」「睨む」「見つめる」など何かしら意味のある目玉の動かし方だけ…。」

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メビウス・レター

メビウス・レターメビウス・レター
(1998/01)
北森 鴻

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騙されるだろうなーとは思ってたんですよ。うん。
読む前から、相当トリッキーな話だという噂はそこここで見聞きしていたので。
案の定…というか、見事に落とし穴に落とされまくりましたよ。それはもうどっすんどっすんと。
ラスト近くになり、「ああそういうことか」と納得しかけたところでまたどっすん。
どうしてこう、私って騙されやすいのでしょう。作者の術中に嵌り過ぎですよもう。
それにしても、この捻り方はすごいです。よくここまで考えられたなぁと感心しました。お見事!

お話としても面白かったです。
ただまぁ、母親として読めば「それはないだろう」というような心理描写が多く、少々納得し難い面もあります。
無理矢理だなぁとも思うし、結末は、なんだかサスペンスドラマの山場のよう…。
けれど、人間の心の闇と言えば、そう言えなくもないかもしれないなぁ。
作中に「山月記」の一節が出てきますが、誰であれ、本能に従う"獣"の部分を持ち合わせているのでしょう。

どこまでも清冽で、透明な…
「ぼく」と「彼」の純粋な魂は、あの結末で少しでも救われたのでしょうか…。

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Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
でも家事は忘れても(・_・)読書は忘れない。
そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

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