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スロウハイツの神様

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)
(2010/01/15)
辻村 深月

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スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)
(2010/01/15)
辻村 深月

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なんなんだ?辻村深月という人は。

ここまで読者を置いてけぼりにして突っ走っても、みんな付いてきてくれるという自信があったのか。
それとも、途中で脱落したならそれでいいと思っていたのか。

私は正直途中離脱しそうだった。

上巻のあまりのつまらなさに。
主人公の「赤羽環」の魅力のなさに。

きっと以下の2点がなければ下巻は読まなかっただろう。

チヨダコーキの、"とあるひと言"にどうしても合点がいかなかった
辻村深月作品がこんなクソつまんないお話で終わるわけがない

最後まで走り抜いて本当に良かった。
下巻に入ってもなお、ぜんぜん面白くならなかったのに…
どうして残り三分の一を切ってから、いきなり話がひっくり返るのか。

私がひっくり返ったじゃないか。
そうかそうかそういうことだったのか。
最後は涙で前がみえなくなったじゃないか。
どうしてくれようおのれ辻村め。

伏線は、確かに色々あったんだよね。
ほとんどは私の思った通りだったし、伏せられていたあれやこれやについては、特にヤラレタ感はない。
ひっかかっていたコーキのあのひと言だって、「たぶんそういうことじゃないかな」とは思っていた。
だけどだけどまさかここまでとは。

いやいやいやいや。ほんとにね。
この人の描く女主人公って、大体が初めはイヤなヤツなんだ。
特に赤羽環なんて、自分の手で栄光をつかもうとしているクリエイターだからね。
気が強くて傲慢で、「権力バンザイ」とか自分のアパートに住む住人を「面接」して「特に気に入った人しか住まわせない」とかもう本当に鼻持ちならない。
他人を勝手に分析してわかった気になっていたり、かと思えば中途半端な情をにじませたり、勝手に傷ついたり、ほんっと「なんだかなぁ」と溜息が出るような人物像。
主人公がイヤになると、それ以上読み進めるのが本当にツライのだ。

それだけに、あのラストのドンデン返しは実に見事だった。
私の中のチヨダコーキ像が、赤羽環像が、完全にひっくり返った。
そして読み終えた後はしみじみと、
「ああいいお話だったなぁ」
なんて思っちゃったりしたのだ。

なんなんだよほんとにもう。

やっぱり辻村深月はタダモノではない。
だけど今作はちょっと文章が荒れていた気がする。
この人の「○○○で、だから○○○」という独特の言い回しというのはクセだと思うんだけど、今回は特にそれが目立っていてちょっと気になった。同じ表現が続けて2回出てきたりとかね。それも効果を狙ってのこととは思えない場所だったし。
地の文が気になってしまうというのはあまり良くない文章ってことだと思うのだ。
そこだけが残念。

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↑読後感がいいお話はやっぱりいいですよね。
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八日目の蝉

八日目の蝉 (中公文庫)八日目の蝉 (中公文庫)
(2011/01/22)
角田 光代

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不倫相手の子どもを誘拐して、我が子として育てる

赤ん坊を目の当たりにした瞬間、どうしても離れられなくなった
欲しくなった

それは母性ではない、と断ずる人がいる。

それでは母性とは何なのか、納得できるように説明して欲しいと私は思う。

実のところ、私には母性が何なのか、よくわからない。
わからないなりに考えた結果、それは「親子の情」を超えた先にある「不安」ではないかと思い当たった。

なんらかの原因により我が子の将来を悲観して、子どもの命を絶つ母親がいる。
自死するにあたり、子どもを道連れにする母親がいる。

子どもと自分は別の存在なのに、と識者は口を揃えて言う。
子どもの意思を聞かず勝手に未来を閉ざすのは、間違った行為だと断罪する。

それは正論。全く議論の余地もない。
子どもを生むまで私自身もそう思っていた。

けれど。

実際に子どもが生まれたら、毎日が不安の連続だった。

夜中に心臓が突然止まってしまったらどうしよう
ミルクが気管に詰まって窒息したらどうしよう
この子が誘拐されたらどうしよう
もしここから落ちたら(当時高層マンションに住んでいた)どうしよう

どうしようどうしよう不安で不安でたまらない

当時はこれほどはっきりと言葉で表せなかったが、たぶんこんな不安に一時押し潰されそうになっていたと思う。

猫など動物の世界でも、生まれたばかりの我が子が、見知らぬ他人に触れられた場合、
それまでとても可愛がっていたにも関わらず、その子を食べてしまったりすることがあるという

うちの可愛いこの子が触られた。知らないだれかに抱かれた。今度はもっていかれてしまうかもしれない盗られてしまうかもしれない盗られて食われてしまうかもしれない。ああ不安だ不安で不安でじっとしていられない。

だれかに盗られて食われるぐらいならいっそ私が…

強烈ではあるが、母性とは、そういう矛盾に満ちた衝動ではないかと、私は思う。

長くなってしまったが、そう考えれば、ほったらかしにされている他人の子を目にした瞬間
「わたしが育てなければ」
と咄嗟に主人公が思ってしまったとしてもなんの不思議もない。
いや、ひょっとすると、次に起こる惨事を無意識のうちに予知しての行動だったのかもしれない。
もちろん、もっと複雑な感情があったこととは思うが。

この物語に登場する人物はほとんどが歪んでいる。
私は決して不倫を認めたりしてはいない。
けれど、理性で止められるなら、それは恋愛ではないとも思う。
だからそのことについては云々しない。

「どうして私だったのか」

それは私がかつて何度も何度も繰り返した言葉。
歪んだ家庭に育った者は、だれもが一度は考えたことがあるだろう。
「どうしてふつうの幸せな家に生まれなかったのか」

けれど過ぎたことはすべてどうしようもない。
生まれる家も育つ環境も、自分では選びようもない。
選べるのはここから先の未来だけ。

宿命や血やその他モロモロの美しくないすべての物を引き受けながら、引きずりながら、いつか自らが血を流してでも引きちぎってそこから飛び立たなければならないのだ。
低空飛行でも、続けて飛んでいるうち、力をたくわえいつか上昇できることを願って。

その先に見えるのは、もしかしたらそれまでに見たこともない
とてもとても美しい世界かもしれない

私も、八日目の世界を夢見て、ここからまた始めようと思う。

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↑読後の余韻をまだひきずっています。感情的な言葉で書き散らしてすみません。それでもよければ。

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狂骨の夢

文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)
(2000/09/05)
京極 夏彦

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文庫版のカバーイラストが半端なく怖いですね。
登場人物じゃなくても夢に出てきそうです。
でも内容は別にホラーというわけではなくあくまでミステリなので怖いのがダメな人でも大丈夫です。多分。

「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口くん」

ですから。
そこはきちんと(かどうか多少危ういですが)京極堂が"落として"くれます。

殺して首を落としても何度も何度も首を生やして甦る死者とか
前世の記憶だか他人の記憶だかを持っている女とか
色々オカルト的な味付けは、当然今作を彩っているわけで、
やはりそこらへんに焦点を当てて感想も書かれるべきだとはわかっているのです。

わかっているのですよ、私もね。

でもでも。
どうしても。
こっちに目がいっちゃうのだ仲良し四人組が大好きな私としては。

それは…それは…

関口ついに榎木津の下僕決定か!

という部分です。(きっぱり)
前回「桃太郎」で今回「西遊記」ですか。そうですか。
いずれにしろ「猿」なんだな関口よ…実に不憫だ。
ついに木場修からも
「褒め甲斐はないが貶し甲斐はある。」
なんて言われちゃうしなぁ。
本人は実に真面目なんだけどね。関口本人が語っている時はそうでもないんだけど、そりゃあやっぱり第三者的に見ると「鬱陶しいことこの上ない」しなぁ、関口くんは。
でも今回、あまり京極堂からは弄られなかったな。
…ていうか、後半までほとんど登場しないんだもんなぁ、京極堂。
そう、あれだけ分厚い本の、三分の二ぐらい登場しないのだよ。
なのに、最後には全部美味しいところもってっちゃう、みたいな。

しかもかなりなエンターティナーだしな彼は。
黒装束で真っ暗な舞台で、「反魂香」なる怪しいお香を焚いちゃったりして、どんどん聴衆を怪しい世界に引きずり込む。そしてそれぞれの"憑き物"を次々落としてゆく。
こういう人間がうっかり権力志向に走っちゃったりしたら本気で日本は危ないかもしれないなぁ。なんてね。

まぁ今回、オカルト的な部分はわかり易かったのではないかな。
だってこの私でさえ、"朱美さん"の謎は解けたからね。

それにしても、色々と考えさせられるテーマではあった。
宗教って、人間を幸せにすることが究極の目的のはずだよね。
どんな宗教でも、開祖はそう望んでいたはず。
それがどんどん目的を外れておかしな方向へ走ってしまうのは
身の丈を超えた存在を扱おうとする所以かなぁ。
前作「魍魎の匣」でも感じたことだけれど、入れ物が大切なんじゃないんだ。
中身が主役なんだ。

エンディングの朱美さんの潔さに強くそう思った。

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もうりょうのハコ

京極堂2

関口の初めての単行本を読んでの京極堂さんの感想。



ひどい…

酷いよ京極堂。

それじゃあ誉めてるんだかけなしてるんだかわかんないよ?


というようなシーンが私的にとてもツボでした。


そして後ろで寝っ転がってるのは榎木津のつもり。

私の中では榎木津はあんな感じ(・_・)


お目汚し失礼しました~~~

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魍魎の匣

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)
(1999/09/08)
京極 夏彦

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どうしよう…
すっかり京極堂に「憑かれ」ちゃったよ。

これほんっっとうに面白かった!
この本に初めて対峙した時には、その凶悪なまでの分厚さに正直身構えてしまったのですが、いざ読み出すとページをめくる手が止まらない止まらない。
これだけ長いと、さすがに一気に、とはいかないけれど、遅読の私にしては驚異的なスピードで読破してしまったのです。

この物語、前作「姑獲鳥の夏」同様、ミステリとしてはギリギリなんですよ。
で、実は私自身はミステリとしては捉えていません。

「魍魎とは境界だよ」

京極堂がそう断ずる通り、まさに、人としての境界を超えるか否か、の物語。
登場人物の一線の超え具合は、むしろもうファンタジーの領域だろうと。
その突き抜け方に、どうも私は"憑かれ"てしまったようなのです。

犯罪には動機が付きものと誰もが言う。
けれど、動機なんて、所詮、世間が納得するための後付け。
いくら理由があろうと何だろうと、普通、人は人として踏み越えてはならない一線は超えない。
そこを超える後押しとなる一瞬のナニモノかを「通り物」と呼ぶ。
言い換えれば、誰でもが犯罪者となる可能性を秘めているのだよね。
うん、いつも通り、京極堂の薀蓄はとても深い。

ところで、この物語の中には、2種類の「ハコ」という文字が登場します。

タイトルの「匣」と御筥様の「筥」。
文字そのものにどういった違いがあるのかはわからないけれど、いずれにせよ、「ハコ」は本来、モノを容れるためにあるものであって、決して箱そのものが主体となるべきではないでしょう。
この物語中の人物の不幸は、どれも中身ではなく入れ物が主体となってしまったが故に、訪れたものなのだと思います。

これは個人的な見解なのですが、私は、人には

「始めに箱を用意して、後から中身を考える」人と

「始めに中身を用意して、後からそれに見合った箱を考える」人

の2つのパターンがあるように思うのです。

どちらを選ぶにせよ、用意された箱とその中身がうまく調和できなかった時に、人は不幸を感じるのではないでしょうか。

びっしり
みっちり

そういう表現ってとっても「満たされた」感がありますよね。
幸福と呼ばれる感情が、"満たされる"ことから引き起こされるのであれば、多分に比喩的になりますが、用意した箱がみっちり詰まった状態を幸福と言うんじゃないかって気がします。
その意味では、与えられた境遇に満足して、スライムのように形を変えて自ら箱にみっしり詰まることの出来た雨宮が一番の幸福者だったのではないでしょうかね。
柔軟性というのも、幸福のひとつのキーワードかもしれません。

物語全体としては、タイトルに違わず陰惨で猟奇的な雰囲気が漂うので、バラバラ死体だのなんだのが苦手な方にはオススメできないのがとても残念なのですが、今回はとにかく常連キャラがとても面白いので、できれば是非、京極堂シリーズ未読の方にも読んでみていただきたいなぁと思うのです。

その京極堂は相変わらず関口に対しては本当に辛辣なんですが(笑)、酷薄なことを言いつつ、本当は関口のことが心配でほっとけないんだなぁというのが言葉の端々や態度に表れていて思わずクスリとさせられたし、榎木津は世間からのズレ具合が益々パワーアップしていて目が離せないし、木場修はかっこ良すぎて思わず
「惚れてまうやろ~~」
な雰囲気を醸し出してるし、兎にも角にも先入観は捨てて、読むべし読むべし、ですぞ。

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Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
でも家事は忘れても(・_・)読書は忘れない。
そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

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