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異星人の郷

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異星人の郷 下 (創元SF文庫)異星人の郷 下 (創元SF文庫)
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「本が好き!」にて献本していただきました。

中世ドイツの山奥の小さな村に突如不時着した宇宙船から現れたのは、バッタのような容姿の異形の生物だった。
村人は彼らを"悪魔"と畏れ忌避するのだが、重傷を負い、体液を撒き散らして息絶えた彼らの仲間を見て、「悪魔が死にますか」と、"隣人"として、村の教会の神父は彼らに手を差し伸べる。そして様々な思惑から、神父と共に彼らを手助けする人々と異星人との交流が始まる。
一方、21世紀の現代では、一人の歴史学者が、歴史の中にぽっかりと穴があいたように失われた中世の村の謎を追い、その恋人は、一見物語とは無関係に見える物理学の研究に没頭している。

私は中世という時代背景に疎い。そして物理学にはもっと暗い。
なので、なかなか本書に書かれていることが理解できず、読み進めるのが時々辛かったりしたのだが、とにかく先が気になって頭の中の「?」は無視して一気に読んだ。
途中でやめなくて大正解。本当に最後まで読んでよかった。

異質なもの、未知なるものとの出会いは、何もSFの世界の「宇宙人とのファーストコンタクト」に限ったことではない。
未知なる国との対峙、いやもっと身近に存在する"宇宙人のような隣人"との、嫌になるほど現実的なご近所付き合いの中にもそれは存在する。
いみじくも、作中の神父は語る。
「クレンク人(バッタ型宇宙人)は最初はみんな同じ顔に見えたが、いまではそれぞれがまるで違った顔や個性を持っていることを知っている。」

よく知らない人間のことはぼんやりとしか見えない。
よく知らない民族はみんな同じに見える。

それはお互い様であり、相手は決して
「ワレワレハウチュウジンダ」
とは言わない。相手からすればこちらこそが「宇宙人」なのだ。

今、世間を賑わす様々な民族紛争も、お互いをすりガラス越しに見るように"ぼんやりとしか知らない"ことも軋轢の一因に思えて仕方がない。
分かり合うことは無理でも、認め合うことはきっと出来るはず。
神父との交流により、キリスト教の教えを信じ洗礼を受けるクレンク人まで現れたくだりを読んでつくづく考えさせられた。
しかし、神父もまた、ただの"人"。
時には"バッタの友"を疎ましく感じ、相手のためにではなく自分たちの平安のために彼らが出て行ってくれることを望んでしまったりもする。そしてそんな自分を嫌悪し懺悔する。
そんなふうに、神父が超人的な聖人ではなく、過去の罪に怯え、贖罪の日々を過ごすただの人だからこそ、この物語は輝くのだ。


「どうせ死ぬなら 笑って跳ぼう」

自分の身に降りかかる運命を、時には足掻きつつ、けれど最後には従容として受け容れるクレンク人たち。
全ての生命は、いずこかの地に誕生し、成長しやがて死を迎える。
そうであるなら、彼の種と我々との間に、どれほどの違いがあるというのだろう。


エンディングに待ち受けていたのは、震えるほどの感動。

しばらくの間、痺れたように茫然と空を眺めた。


この宇宙のどこかに"バッタの友"の故郷もきっとあるに違いないのだ。

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テーマ 書評
ジャンル | 小説・文学

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こんばんは☆

レビューがお上手でしばし感動しました。
特に異星人を国や隣人に置き換えているところが、なるほどなと。
説得力、かなりありました。
読了、お疲れ様でした☆

Re: こんばんは☆

> 惺さん
いつも優しいお言葉をありがとうございます。
書評って難しいですね。
頭にある混沌とした感情を、どうやって言葉に置き換えようかといつも悩みます。
もうちょっと淡々と冷静に書けるようになるといいなーと思います。
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Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
でも家事は忘れても(・_・)読書は忘れない。
そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

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