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コッペリア

コッペリア (講談社文庫)コッペリア (講談社文庫)
(2006/07/12)
加納 朋子

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人は何故「人形」に惹かれるのか。
そして「人形」に何を求めているのか。

ここで語られる人形は、所謂アンティークドールではなく、現代作家の手になる「球体関節人形」。
本作では、幻の人形師「如月まゆら」が産み出した至高の作品「まゆらドール」を巡って、様々な人間模様が描かれる。

天地創造の神は、自らに似せて「人間」をつくった、という。
もしそうなら、人形師もまた、自らの手で生殺与奪の権限を持つ存在を産み出した、人形にとっての万能の神と言えるのだろうか。
確かにある意味ではそうだろう。人形が、それを産み出した人形師の手元にあるうちは。
けれど、人形師が、自らつくりだした人形に込めた情念は、決してそれを手にする「ヒト」や、その"型"の元となった人間までは届かない。
そして物言わぬ人形の力を妄信した如月まゆらに悲劇が訪れた…。

そもそも人形とは一体なんだろう。
ヒトガタ…人の形をとらなくてはいけないもの。
「人形」は誕生の瞬間から「完成品」であり、決して成長しない。変化してはいけない。
そしてそれを手にする人間により、様々な役割を演じさせられる運命にある。

昔、親戚に、子どもの出来ない夫婦がいた。
その夫婦は、人間で言えば2歳の子ぐらいの大きさのお人形を、どこに行くにも連れてきていた。
名前を付け、人間の子どもの服を着せ、食事の際には子ども用の椅子にきちんと座らせ、子ども用の食器に食べ物を入れて食べさせるマネまでしていた。
「この子は好き嫌いが多くて困る」「我儘でねぇ」
なんて冗談とも本気ともつかない事を口にしては笑っていた。
今思い返せば、とても切ない。
人形が、夫婦の子どもの身代わりをしていた。それが、あの人形の"役"。

主人公「聖」もまた、自らに"役"を与え、それを演じてきた。
自分をお人形のように可愛がった末に捨てた父親に「あれが自慢の娘だ」と言わせたくないがために、類まれなる美貌をもちながら、決して表舞台に立とうとしない。

一方、その生い立ちゆえ生身の人間と上手く関係が結べず、「まゆらドール」と、「まゆらドール」にそっくりな「聖」に焦がれる青年「了」。
聖は、自分が「コッペリア」であり、一方でスワニルダでもあることに気付き苦しむ。
役を演じることで楽になる人間と、苦しくなる人間がいる。
どちらの心情も理解できてとても心に痛い。

物語は中盤から、それぞれの立場をひっくり返し、実に見事な展開を見せる。
けれど、残念ながら、私は途中でそのからくりに気付いてしまった。
それは決して仕掛けが安易だという意味ではなく、たぶん私が加納朋子を信じていたからだろう。
だって、あの加納朋子だもの(笑)。きっと救いが…みたいな。

人は人であり人形ではない。
役を演じつつも、どんどん変化し続け、成長し続けることができる。

いつかそれぞれの人形は、それぞれが在るべき処へ帰る。
そしてそれぞれの人間も、納まるべきところへ納まる。
エンディングの了の"策略"に思わずにんまり。
やっぱり加納朋子はいいなぁ。

加納朋子といえば、「ななつのこ」や「ささらさや」のように、「ふんわりと温かく、清潔な優しさ」に満ちた作品群を思い起こすが、この作品は、そんな優しい作品とは少し毛色が違う、暗いどろどろとした作品だとよく評価される。
けれど、私は思う。
加納朋子という人は、やっぱり優しさで出来ている。
「コッペリア」も、毒に見える表面をはがすと、中はきちんと優しさで満たされているのだ。

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テーマ 書評
ジャンル | 小説・文学

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こんばんは☆

これはまた面白そうな本ですね!
モチーフがバレエのコッペリア。内容も仕掛けがあるらしい、と。
チェックします!

道楽猫サン、今年はお世話になりました。
また来年もどうぞヨロシクお願いいたします!

Re: こんばんは☆

> 惺さん
すすすすみませんっっ!!
せっかくコメントいただいていたのにお返事が遅れてしまいました。
惺さんはバレエもお好きのようなので、「コッペリア」楽しめると思いますよ。

こちらこそ、昨年はそちらへお邪魔させていただき、楽しかったです。
今年もよろしくお願いいたします。
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Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
でも家事は忘れても(・_・)読書は忘れない。
そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

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