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凍りのくじら

凍りのくじら (講談社文庫)凍りのくじら (講談社文庫)
(2008/11/14)
辻村 深月

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「あなたの描く光はどうしてそんなに強く美しいんでしょう」

「暗い海の底や、遠い空の彼方の宇宙を照らし出す必要があるから。そう答えることにしています。」

ドラえもんの作者、藤子不二雄はSFのことを「少し(Sukoshi)不思議(Fushigi)」と表現したという。
ドラえもんに強く影響を受けている主人公「理帆子」は、それになぞらえて、自分の身近にいる人たちの印象を「スコシ・ナントカ」と喩える。

「少し・ファインディング」
「少し・フリー」

そして自分自身は「少し・不在」。

必要以上に自己主張をせず、周囲に溶け込むフリをしつつ、その実、その場所には決してなじんでいない。
アタマの悪い友人たちを見下し、本当の自分はそこにはいないと身勝手な疎外感に浸る。

そんな「理帆子」は、本当は自分が「少し・痛い」ことを知っている。
心の底では強烈に人を求めている。
だからこそ、現実を見ることが出来ず身の程知らずな高みばかりを目指す「若尾」と離れられず、なぐさめ、励ましつつ自分の価値をそこに見い出す、言わば共依存のような関係に陥っている。
でもやっぱり「若尾」のことは「少し・腐敗」していると心の中では友人たち同様見下している。

そんな日常が、「少し・フラット」な高校生「別所」や、口が聞けず「少し・不足」な男の子「郁也」たちとの出会いによって変わってゆく。初めは少しずつ。そして、ある決定的な出来事を境に大きく。

そこから彼女は様々なことを学んでゆく。
自分に見えているのは、その人のごく一部にしか過ぎないのだということ。
自分は孤独ではなく、その気になれば居場所はどこにでもあるのだということ。
何より自分には価値があるのだ、ということ。

そうして、物事がいい方向へと向かい始めた矢先に、事件は起こった――。


この物語では、ドラえもんの「ひみつ道具」がガジェットとして非常にうまく用いられている。
実は、私はドラえもんについてはテレビアニメで時々観る程度の知識しかなく、こんなにも様々な「ひみつ道具」があったことを知らなかったし、こんなにも深いお話だったのだということも全く知らなかった。ドラえもん、恐るべし。
(でも私はあまりドラえもんは好きではないのだけど。)

ラストのドンデン返しは非常に感動的。
あちこちにばら撒かれたヒントから、タネ明かしの前に私はそのからくりに気付いてしまったし、まぁよくある仕掛けだよね、とは思うのだが、そこにもドラえもんの「ひみつ道具」が巧みに使われ、実に「少し(Sukoshi)不思議(Fushigi)」な世界を醸し出している。

そして「理帆子」は光に導かれ、救われる。
同時に、読んでいる私も、癒された。


辻村深月の書く物語は、たいてい「少し・毒入り」。
でもみずみずしく美しい。
そして、登場人物が別の作品にも少しずつ繋がってゆくところが楽しい。

実のところ、私は辻村深月という作家が好きなのか嫌いなのか、よくわからない。
あざとい、と腹を立てることも多いし、愛せないタイプの主人公が多くてうんざり、とも思っている。
でも何故か、書店でこの人の本を見かけると、つい手に取ってしまう。
おそらく「同族嫌悪」なのだと思う。だから気になるのだ。

新しい本が出たら、きっとまた読まされてしまうのだろうな。

「少し・悔しい」(笑)。

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ジャンル | 小説・文学

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はじめまして、gakerと申します。

理帆子は周りを見下しながらも、自覚があり、他人を求めていますよね。そこが若尾との違いなんだと思います。

若尾が不快で不快で、辻村作品じゃなければ途中で投げ出していたかもしれません。でも最後まで読んでよかったです。

私は恥ずかしながら見抜けませんでしたが、それだけに、彼が告げた秘密道具の名前とその性能に心を揺さぶられました。
ベタはベタなんですけどね。

初めまして♪

> gakerさん
ようこそいらっしゃいませ。
実は私は「凍りのくじら」が初読み「辻村」作品だったのですよ。
で、辻村さんという人は、きっと私と似たところのある人だとピンときたのです。
だからこそ嫌悪しつつ目が離せない(笑)。
そして、だからこそ、主人公の気持ちが手に取るようにわかってしまったりもするのです。
「若尾」は、物語だから少し極端だったけど、きっとだれもが「カワイソメダル」を付けたくてしょうがないんだと思います。
結局、みんな「私だけは他人とは違う」という自尊心を保ちつつ、でも何故か「周囲と同じ」であることに安心して生きるものなのかもしれませんね。
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Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
でも家事は忘れても(・_・)読書は忘れない。
そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

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