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向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)
(2008/07/29)
道尾 秀介

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だ、騙された……。
向日葵というタイトルに騙された。
向日葵には、真夏に凛と上を向いて咲く、元気な花というイメージがあるのだもの。
よもやこんなダークでホラーなお話だとは。
そう思って改めて見返せば「咲かない」なのだよね。そうか、咲かないのか(しょんぼり)。
しかしよくよく考えれば、向日葵って結構怖いかも。特にあのデカイほう。
あれも何かの生まれ変わりなのかもね。たとえば、日の目を見たかと思えばすぐに死んじゃった生き物とか。

向日葵は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ(前田夕暮)

どっしりじゃなくゆら~りだもんね、結構ホラーだよ。
という主旨の感想を、この短歌について書いたら、「それは間違っている」と国語教師にさくっと斬って棄てられたなぁ。ああ、遠き高校生時代。

それはともかく。
冒頭からして、相当怖いのだこれ。
夏休み前の終業式の日。学校を休んだS君の家に、担任に頼まれ、学校から配布されたプリントを持って行ったミチオ。しかしそこでミチオはS君の首吊り死体を見つけてしまう。S君の遺体は、庭に咲く向日葵を凝視しながらぎぃぎぃと揺れている…。
ところがそのことを知らせに学校に戻っているあいだに、何故かS君の遺体は忽然と消えてしまう。

人は死んだら7日ごとに転生の機会が訪れるという。ちょうど7日目、死んだはずのS君が、なんとクモとなってミチオの前に現れる。
そしてクモの姿のS君は、ミチオに「僕は自殺ではなく殺された」のだと告げる。

ひぃぃぃぃぃぃぃ。

私はホラーが全く以ってダメなのだ。
この時点でもう、この本を手に取ったことを悔やんだ。ムンクの叫び状態だった。
だけど続きが気になる。S君を殺したのは果たして誰なのか。そして自殺に見せかけたのならどうして遺体を隠したのか。
同時期に近隣で繰り返されていた犬猫の不審死とのつながりは?何故死んだ動物は一様に足を折られ口に石鹸を詰め込まれていたのか。

この物語では、自分を守るため、だれもが嘘をついている。
ひとつの嘘が暴かれても、また次の嘘が重ねられ、様々な糸が絡み合って、ミチオじゃないが、どんどん何がなんだかわからなくなってくる。
いったい真相はどこにあるのか。
通勤電車の中で読み始めたものの、気になって気になって仕事が手につかないほど。その夜一晩で一気に読んでしまった。

やがて明かされる真相。すべての事柄がひとつに繋がる。
ああそうだったのか。
3歳の妹に感じた違和感の正体も、壊れた母親の真実も、あれもこれも。
これは本当に見事な叙述トリックだった。
あれ?…ということは、もしかしてスミダさんも?
いやいやミチオ自体、既に狂気の中に立っているのだろう。

「誰だって、自分の物語の中にいるじゃないか」

ミチオの言葉にいきなり頭をがつんと殴られた気がした。
そう、だれだってみんな自分に都合の良いストーリーを組み立て、ある意味自分だけのファンタジーの世界を生きている。
嘘をつかない人間などいないのだ。
できるだけ傷つかないように、壊れてしまわないように、自分を守って生きている。

怖いけれど、切ない。
胸がきゅっと苦しくなるそんなお話。後味は決してよくないけれど、心の中にずしっと残る重さがあった。

ただ一点。これは私自身が今現在「母親」という身であるからこその違和感。
ミチオの母親が壊れてしまったのは、理解できる。
しかし、怒りの矛先がむかうのは、決してそこじゃないはず。

母親なら、ああはならない。

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向日葵の咲かない夏

 「向日葵の咲かない夏」(道尾秀介:新潮社)、何とも不気味な作品だ。もっとも、この作品は、ホラーサスペンスだから、不気味というのは最高のほめ言葉となるのだが。   ...

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待ってました~♪

記事、待っていました!!

コレ、ホントにコワイですよね~
私も「ホラーだなんて聞いてないよ」と、読み始めてしまったことを後海しました(ToT)
でも半端にやめたら余計コワイからイッキ読み^^;

道尾秀介作品には、なぜか壊れた母がちょいちょい登場するんです。しかもそれはないだろうなぁ、という壊れかた・・・自分が(イチオウ)母親だから違和感を感じるのでしょうか。。。

秀作ですね^^

これ読んでる途中ミチオなんでこんな行動するんだろう?とかよくわからなかった部分が多かったんですよね^^;でも最後まで読むと、ゾゾゾって感じでした(苦笑)カフカ的であり著者のカリカチュアでもあるのかなーなんて思ったりもします^^

読書系女子さんへ

本当に怖かったよ~(涙目)。
なんか背筋が寒くなるというよりは肌が粟立つ感じの怖さでした。

> 道尾秀介作品には、なぜか壊れた母がちょいちょい登場するんです。
そうなんですか。
私はこれが初読み「道尾」作品だったのでよくわからないんですが
何らかのコダワリがあるんでしょうかね。
ちょっと興味あるので他の作品も読んでみようかと思います。

Re: 秀作ですね^^

怖かったけど、本当に面白かったです!
そうそう、私もカフカを思い描きました。
虫への転生率が高いってところとか、何かのメタファーなんですかね。
ああ、でも猫とか花とかもありましたっけ。

「神様ゲーム」という小説へのオマージュという話もありますね。
こちらも読んでみたいです。

向日葵の咲かない夏

>だ、騙された……。
>向日葵というタイトルに騙された。

道尾作品はトリッキーで、読者をひっかけようという気が満々ですからね(笑)
それにしても、不気味な作品でした。

風竜胆さま♪

コメントありがとうございます♪

騙されるのは大歓迎!なんですが、怖いのはやめてぇ(><;;
って感じです(笑)。
ほんとに不気味なお話でしたが、何故か心惹かれるものがあり。
この方の他のものも読みたいと思っています。
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Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
でも家事は忘れても(・_・)読書は忘れない。
そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

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