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太陽の塔

太陽の塔 (新潮文庫)太陽の塔 (新潮文庫)
(2006/05)
森見 登美彦

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相当ネタバレあります。未読の方は要注意!


濃い赤錆色一色の世界から淡い薄暮の空へと。
まるでグラデーションがかかったような、見事な心象風景の移り変わり。

前半には、これでもかとねっとりむさ苦しい男子学生の生活が描かれる。
ところが「Gキューブプレゼント大作戦」などにうかうかとノセられて爆笑していると、いつのまにか「叡電」に揺られ、非日常の心象世界へと運ばれるのだ。
それがまったく不思議ではないものとして描かれる。びっくりするほどのファンタジー。

思えば、太陽の塔ほど不思議な建物はない。
その昔、太陽の塔は日常として私の生活圏に鎮座していた。
通勤電車の車窓から毎日見ていたのだ(!)
日常に存在していながら、その非日常的存在感は圧巻だ。
過去・現在・未来の顔が塔にくっついているという、その存在自体が既にファンタジー。
実は、太古の顔までが本当はあったらしい。それが何故か現在は失われているというミステリーさえもある。
当に宇宙遺産。


読み終えたあと、何故か心がきゅっと苦しく切なくなった。

なんて純情な"ストーカー"。
彼女に別れを告げられたときも冷静に握手をして別れ、自分の心に蓋をして「彼女は断じて恋の対象ではなく一つの謎だ」などと虚勢を張り、愛車「まなみ号」(もちろん自転車)を駆って、かつての恋人であった「水尾さん研究」を淡々と続ける。
そして同じ"水尾ストーカー"の遠藤の背中をついつい押してしまう。

クリスマスイブに決行された「ええじゃないか騒動」の最中、酔ったように「ええじゃないか」を叫ぶ群衆のなかに水尾さんを見かけた主人公が

「どうでもええわけがない。どうでもええわけがあるものか」

と、彼女への想い、未練を初めて認める怒涛のクライマックスは圧巻。
彼は思い出す。水尾さんと別れた後、本当は降りしきる雪の中でこらえ切れず涙をこぼしたこと、彼女の仕草、嗜好、彼女と過ごした日々。
そこに至る表現力のなんと見事なこと。言葉のラッシュに大いに酔わされた。


叡山電車から降り立った彼が見た風景。
太陽の塔を胸を反らせて精一杯見上げる彼女の横顔が印象深い。


だれもが皆なにかしら間違っている。
間違っているから、美しい。

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テーマ 書評
ジャンル | 小説・文学

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No title

どうもです。

『太陽の塔』は他の森見作品と比べて、切なさがありますよね。
根底を流れているというか。
それが爆発する最後の数ページは本当すごいです。

後読み終わった後の余韻がすごくいいですよね。
本を閉じて「はあ~」とため息をついてしまいそうな。

ちなみに太陽の塔を見ていた電車とはモノレールでしょうか。
私も太陽の塔が見える位置に実家があるのでちょっと思い入れがあったりします。

gakerさんへ

読む前はもっとバカバカしいお話かと思ってたんですが、ヤラレました(笑)。
切ないというか哀愁漂う。
そそ、余韻があるんですよね。うんうん、溜息、すごくよくわかります。

おおっご実家が太陽の塔のお近くとな。
そう、モノレールですよ。
意外とどこかで会っていたりしてね(笑)。

この作品は凄かったですね

この作品は一度目は抱腹絶倒の後の切なさの余韻がたまりませんでしたが、これって非日常の妄想の中だけがファンタジーなのかな?と問うたとき、この作品の世界観がガラッと変化しました。なぜなら、これは「水尾さん」の存在自体がファンタジーなのではないか?と思ったからです。水尾さんを街中で見つけてもなにをしても、すべて主人公の主観的話であり、本当に触れたり話したりってのがない。それは、空想の上に空想を、主人公が造り上げたからだと。それゆえにファンタジーノベル大賞だったんだぁーと^^

Re: この作品は凄かったですね

> 「水尾さん」の存在自体がファンタジーなのではないか?

Σ( ̄□ ̄*)新しい視点ですね。
確かに水尾さんとの会話シーンて、クリスマスイブのまねき猫事件以外出てこなくて、なんだか漠然とした印象しかないですもんね。
でも、となると遠藤の存在はどうなんでしょう。
うーん、疑問は尽きません。
いずれにしろ、こんなファンタジーもあるんだと目からウロコでした。

もう一回読みたい~

道楽猫さまのレビューを拝見して、また読みたくなりました。
もう一度感動したいし笑いたいです。

太陽の塔、京都に行く時に高速道路からみました。
ひぇっと叫びそうになりました。
あの存在感!たしかに宇宙遺産というのがちょうどいい感じ。。。

Re: もう一回読みたい~

あれ?お返事書いたのに消えている…
すみません(汗)。
そう、「太陽の塔」って四畳半みたいなお話かと思っていたのでちょっと不意打ちをくらいましたわ。
こんなに切ないお話も書けるんだーって。
ていうかこれがデビュー作だったんだーと。

太陽の塔の存在感はほんとものすごいものがあります。
昔は怖くて仕方なかったんだけど、今はすごいなと素直に感じます。
アメーバなう
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道楽猫

Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
でも家事は忘れても(・_・)読書は忘れない。
そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

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