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エンジェル・エンジェル・エンジェル

エンジェル・エンジェル・エンジェル (新潮文庫)エンジェル・エンジェル・エンジェル (新潮文庫)
(2004/02)
梨木 香歩

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こんなCMを見たことがある。

お母さんが自分の若い頃の写真を持ってきて
「ほら、これお母さん。昔はこんなに細かったのよ~」
とドヤ顔で我が子に自慢する。
すると子どもはこう吐き捨てるのだ。
「え?お母さんて若い頃あったん?」
それを聞いたお母さん大ショック、みたいな。

そう、もちろん誰にだって若かった頃はある。
シワシワのお婆ちゃんだってある日突然しわくちゃになったわけではなく、ほやほやした赤ん坊の頃がちゃんとあったし、花も恥じらう娘盛りだってあったのだ。
私だって昔から今みたいなヒデヨシ@アタゴオル体型じゃなく、若い頃は…げふんげふん。いやそれはどうでもいい。

家の物置から持ち出した古いサイドテーブルと熱帯魚の水槽から出るモーター音が、ばあちゃんを遠い昔に引き戻す。
ある日突然、自分を「さわちゃんって呼んで」と少女のような顔で孫に告げる。
それは、医学的に見れば単なる痴呆の症状であったかもしれない。

けれど。

思えば私は生まれてからこれまで、色んな場所に想いを残してきた。
母と夢中になってヨモギを摘んだ田舎の畦道。楽しくて楽しくて、帰りたくないもっと遊んでいたいと思ったあの場所。
高校1年の頃、父親の転勤で遠く離れた場所に引っ越すことになり、当時の親友と泣きながら別れたフェリー乗り場。
大好きで夢中になったロックバンドの解散ライブ会場。
もう会えないのなら、ここで死んでもいいと思った。

思い出の場所には、当時の自分が、その頃の姿のまま、今も佇んでいる気がしてならない。

コウちゃんの引っ張り出してきた古いサイドテーブルには、ばあちゃんの強い強い想いが残っていた。
そこに留まっていた想いが、ばあちゃんの魂を、遠い過去に引き戻したのではないかと私は思う。

過去の思い出は、美しいものばかりではない。
あの時ああすればこうしていれば…。
そんな悔恨の念にかられるばかりの思い出も、きっとだれにでもあるだろう。

ばあちゃんは、赦されたかった。謝りたかった。
過去の自分の過ちを。
それがきっと今生の最後の悔いだったのだろう。
天使のようだと言われたばあちゃんは、けれど自分は悪魔に魂を捧げてしまったのだと長いこと苦しんでいた。

間違わない存在などない、と私は思う。
人であれ何であれ。みんな生きるのは初めてで、一瞬先には経験がないから一歩一歩手探りで進むしかない。
だから間違う。傷つく。傷つけてしまう。

誰もが誰かを赦したいと思っている。
そして赦されたいと願っている。

人も動物も、恐れ多くも神様さえも、過ちを赦されたいと希っているのではないかと

読み終えて、はらはらとこぼれ落ちる涙をぬぐうこともなく、ぼんやりと母の写真を眺めていた。


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Author:道楽猫
日々子育てに仕事に大忙し。
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そんな道楽猫が、日々の暮らしの隙間をぬって読んできた本の感想を留めたくて開設したブログです。

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